第108話・主様視点02


「何と!? アタイに人としてのあかしを?」


理奈と詩音が日を置かずして現れ、そんな一報を持って来た。


「取り敢えずこれで、人間社会へ出かける際の障害は無くなったかと」


弥月みつきさんのお兄さんは、本当に優秀ですね」


詳しく聞くと、それはアタイに告白したあの男―――

琉絆空るきあが手配したのだという。


つまり、そこまでアタイと結ばれる事に『本気』というわけか……


ぬし様?」


「お口が緩んでおられますが」


2人の指摘に思わず真顔に踊る。

いかん、どうも自然に顔がにやけていたようだ。


「ま、まあこれで―――

 お前たちの立場もずいぶんと、人と暮らすに便利になったと

 いうわけだな」


何とかこの辺りを統治する者として威厳を保つべく、

喜びを隠しながら語る。


「あとそれで、その時にミツから話が出たのですが」


「む?」


倉ぼっこの言葉に引き続き耳を傾けると、続けて野狐やこが、


「アタシたちはミツ様に命名され、このように心身共に成長した姿に

 なったのですが……


 主様もあの男から名付けてもらえばいかがでしょう、という意見が

 出まして」


「ぶうぅえっ!? おぶうぅうえっ!?」


自分でも予想外の驚きの声が出て、慌てて口を閉じる。


そういえば彼らは、あの安武やすべという御仁ごじんから名前をもらい、

それを機にあのような外見になったのであったな。


だとすれば、彼に名前をもらえば―――

あのDVDの出てきた女性のように、『ぼんきゅっぼん』となる

可能性も……!?


「う、ううむ。

 じゃがそれは、さらにアタイの妖力ようりょくが増す事も考えられる。


 そこまでの力が必要かというとじゃなあ」


落ち着け、主としての威厳を保たねばならん。

何とか平静を装い、彼らに対応すると、


「しゅ、週末にはまた3人ともお見えになるでしょうから」


「その時、証を受け取る時にまた、あのお二人に相談なされては」


そこでアタイと理奈、詩音は一息入れて、


「そうじゃのう。

 もとよりあの二人に相談する予定であったし」


ようやく落ち着き、アタイは彼女たちを帰らせた。


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