第107話・命名


ぬし様が?」


あの鬼っ子のところから帰ってきた理奈と詩音が、どこか態度が

ぎこちなかったので聞いてみたところ―――


「どうも外見がかなり幼い事を気にしているみたいでねー」


「弥月さんの兄上を憎からず思っているので、そこを気にしているのでしょう」


ロングの黒髪と銀髪をした人外がこぼす。


確かになあ……

主様の外見はどう考えても、小学校高学年くらいにしか見えない。


それが琉絆空るきあさん―――二十代半ばの青年と一緒に歩いていたら、

事案以外の何物でもないだろう。


「戸籍は用意されたし、後は身分証を作れば何かあった時も対応は

 出来るんだが」


証明出来るものさえあれば、童顔とも何とでも言い訳は出来る。

特に女性は男と違って、かなり若く見られる事もあるからな。


しかし考えてみれば、ちょっと前の倉ぼっこや野狐やこだって

似たようなものだった。

俺が名付けるまでは、理奈は小学校高学年、詩音も中学生くらいだったはず。


「……ん?」


そこで俺は違和感に気付く。


「どうしたんだべ、ミツ?」


すっかり二十歳くらいの青年の外見になった川童かわこが聞き返し、


「いや、銀。それに理奈も詩音も―――『以前』の姿から成長したのは、

 俺が命名したから、だよな?」


3人とも俺の言葉にうなずく。

俺が命名した事で、妖力ようりょく・肉体ともにパワーアップしたというのなら……


「主様に名前は無いのか?」


俺が人外3人組に問うと、


「無かったと思うよー」


「人間の間でも、決まった名前は無かったと思うっぺ」


「それがどうかしたのですか?」


天井をいったん見上げた後、俺は彼らと視線を合わせ、


「この際―――

 主様の名前を、琉絆空るきあさんに付けてもらったらどうだろうか。


 そうしたらある程度『成長』するかも」


理奈も銀も詩音もぽかんとしていたが、意味を理解した順に口を開き、


「それですわ、ミツ様!!」


「多分、主様もそれなら文句は無いと思うべ!」


「じゃあ、すぐに知らせに行こー!!」


という事で、改めて理奈と詩音が主様の元へ向かう事になった。


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