第186話・動機02


都内・某所にあるマンションの一室。


短髪の細面の男が、タバコを吸って煙を空中に浮かばせていた。


「ねえ、『雲外鏡うんがいきょう』様―――

 いつまで行動制限していればいいのかしら?」


すでに3人は退室し、残った彼にもう1人の女性が問う。


「司法機関の具体的な動きがわかるまで……だな。


 雪女、お前は不服か?」


「私個人の報復自体はすでに終わっていますから。


 今思い出しても気分晴れ晴れ♪」


ショートカットの女性は両腕を天井に向けて伸びをする。


「でもねー、私はもうこれ以上仲間を増やす必要は無いと思うんですけど?

 雑用をやらせる下っ端とか、スケープゴートの必要性はわかりますが」


「確かに、今回の実験では『使える』駒は増やせなかったからな。


 だが、いかんせん人手不足だ。

 俺たち5人だけでは自ずと出来る事に限界が出て来る。


 低級妖怪を仲間に引き入れる提案もそのために出した」


そこでいったん2人は顔を合わせ、


「まあ私はリーダーに従うだけですけどね。


 人外の力とはいえ、復讐出来る機会と能力を与えてくださったんですから」


「……時々思うよ。まだ妖怪の方がマシだと思う人間がいる、と。


 そういう連中に限って、やられる側に回った途端モラルや法治を

 問うてくる」


そう言って彼はまた新しいタバコに火をつけると、


「そもそもなあ―――


 散々悪い事をしていおいて、それから反撃され、追い詰められてから

 『悪かった』というのは反省じゃないと思うんだがな。


 単に仕返しされたくないから、自分がやったような酷い目に

 あいたくないから、その場逃れで謝罪しているだけだ。


 いっそ開き直って、『おうそうだ、俺は好き勝手やって来た。

 だからテメェもそうしやがれ!!』と言った方が潔いだろうに」


「正直、そんな悪人がいるとは思えませんけどね」


その話を最後に彼はタバコを消すと、彼女と一緒に飲み物に移行した。


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