第185話・動機01


都内・某所にあるマンションの一室。


そこでスーツ姿や私服の二十代と思われる男女が、5人ほど集まって

会話を交わす。


「おー『烏天狗からすてんぐ』さん。

 この前はどーもー」


1人の青年が、もう1人の男性に向かって手を振る。


「どうだ? 連中、少しは懲りていたか?」


「あーそりゃあもう。

 ビルの屋上に資材全部載っけてもらえるとは思いませんでしたよ。


 それであちらさんも相当混乱したみたいで」


実はこの集まりの中で、直近の問題として―――

隣りの建設会社が勝手に自社の駐車場に資材を置く事で迷惑を

かけられていたのだが、


『烏天狗』と呼ばれた男に、その『解決』を頼んでいたのだ。


「じゃあそっちの件はそれで済んだな」


短髪の細面の男が、タバコを吸いながら話す。


「そっちの件って……他に何かあるの?」


二十代の眼鏡をかけた秘書風の女性が聞き返すと、


「もともと、その問題で君たちを呼んだはずだ。


 国家機関、警察のこちらに対する対応だが―――

 あやかしを狩る一族と連絡をつけたようだ」


その答えに他の男女4人はざわめく。


「……ったく。こうなってからようやく重い腰を上げたってか」


「そもそも法がきちんと機能している社会なら―――

 俺たちのような存在を生み出しちゃいないだろうよ」


「上等じゃない、と言いたいところだけど……

 どうするの?」


4人はリーダー格らしきタバコを吸う男に視線を集める。


「今のところは静観だ。


 いくら何でも、問題を起こしていないところに介入は出来まい。

 当面、目立った動きは避ける。


 何かあれば弁護士を立てる用意はしてある」


その言葉に4人はうなずくが、


「……計画はいったん取り止めか?」


「個別の行動については強制はしない。

 ただ、証拠は残すな」


それを聞いた4人は納得したように首を縦に振り、

室内に落ち着いた空気が戻って来た。


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