第198話・調査04


「さて、と。


 1つ現場を見て来たわけだけど、何かご意見は」


数日後、特別第六課の会議室で―――

例の廃ビルを先日見て来たメンバー、そして安武やすべ亮一りょういちから聞き取りを

行った職員を集め、琉絆空るきあが協力者兼指導員として話す。


「幽霊、と見ていいんですかね」


1人の職員が恐る恐る手を挙げて質問する。


あやかしにも実体の無いヤツはいる。


 今回は幽霊でも妖でも、実体の無い『それ』がいたという前提で質問でも

 意見でも何でも出して欲しい」


中肉中背の青年の言葉に職員たちは互いに顔を見合わせ、


「実体が無い、という事は物理的に攻撃が効かないと見ていいんでしょうか」


その質問に琉絆空はうなずき、


「そう。そしてもちろんその存在も物理的な攻撃能力は無い」


彼の答えに集まったメンバーたちはざわつき、


「じゃあある意味、幻みたいなものでしょうか」


「攻撃出来ないしされないんじゃ、実害は無いですよね?」


そう問われた彼は首を左右に振る。


「現に出ていたはずだ。


 幽霊であれ妖であれ―――あの場所で怪我人が続出したのは事実。

 つまり手は出せなくとも、何らかの手段での攻撃は可能」


その言葉に、特別第六課の職員たちはゴクリと唾を飲む。


「獣だって頭を使って狩りをする種類もいるだろう。

 幽霊も元人間だ。頭を使う。


 もともと人間でそれが妖に変質したのであれば、実体はあり……

 意図的に実体を無くす能力があるとも考えられる」


続けての説明に、第六課の面々は顔色を失う。


「自分たちが相手にするのはそういう存在だ。


 くれぐれもそれを忘れないで欲しい」


言葉が終わると、彼はドアへと向かう。


「ど、どちらへ?」


弥月みつき家にも独自の調査機関はあるのでね。


 もし何かわかれば特別第六課こちらとも共有するので、ご心配なく」


琉絆空はそう言い残すと退室し、後には困惑した顔の職員たちが残された。


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