第197話・調査03
「だから俺は被害者なんだって!!
あのドラッグを渡したヤツとしゃべっている野郎がいたんだよ!
俺はそいつを問い詰めただけだ!!」
とある病院で―――
特別第六課の職員2人は
彼の病室を訪れたのだが、
「別に疑っているわけじゃないよ。君はこうしてケガをしているわけだし。
ただ、違和感というか……
例えば君は、どうしてドラッグを渡した方じゃなく、そいつと話をしていた
青年の方を追いかけたんだ?」
「そ、そりゃあ」
金髪の長身の男は、落下時に体をかばい手をついてしまい―――
右腕を骨折していたのだが、折れていない方の手で頭をかく。
ドラッグを渡した方はアウトローっぽかったので、一般人らしいそっちを
狙ったとはさすがに言えず、
さらに脅して金を巻き上げるつもりだったとは説明出来るはずもなく、
彼は黙り込む。
「……はぁ、しかしその場で通報するという選択肢もあったんじゃ
ないですか?
ドラッグに関しては貴方は被害者なのだから、警察もすぐに
動いてくれたでしょうに」
もう一方の女性職員が疑問をツッコムと、
「い、いやあそれがですね。
俺と同じようにドラッグを渡されていたりしたらと、そいつの事が
つい心配になっちまったんですよ。
善良な一般市民としては―――これ以上俺のような犠牲者を出す事は
ガマン出来なくてですね」
「立派ね、亮一は……
あの、そろそろこれくらいにして頂けませんか?
亮一も疲れているようですので」
彼の後に、病室に付き添っていた母親が抗議するように声を上げる。
「大変失礼いたしました。ご協力感謝します」
「お大事になさってください、では」
第六課の職員2人は立ち上がると、病室を後にした。
「急に逃げ出した男を追いかけたら、煙のように消えた、か」
「それで吹き抜けの床に落っこちたと。
まあ多分それは事実なのでしょう」
そこで男性職員がいったん一息ついて、
「で、だ。
ドラッグを渡した男じゃなく、話しただけの男を追ったと
いうのは―――」
「あー、確か自分のような被害者を出さないために、でしたっけ?
いやーどう考えても因縁付けて
亮一のウソはあっさり第六課の職員たちに見抜かれており……
男女は苦笑しながら玄関に向かって、廊下を歩き続けた。
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