第196話・調査02


弥月みつきさん、ここが現場のようです」


深夜、特別第六課はすっかり暗くなった廃ビルの中にいた。


「あの男はここに落ちたのか」


琉絆空るきあ他、『人外探知機』をあちこちに振りかざしながら

数名が調査する。


「しかし、どうやったらこんなデカい穴に落ちるんだ?」


「暗闇ならスマホのバックライトでも使うだろうし―――

 まだ日が落ちていないのなら、こんな穴に気付かないわけがない。


 幽霊の噂……

 『男が立っていた場所に行ったら、そこが吹き抜けだった』ってのは

 本当なのかね」


職員たちが口々に感想を述べるが、


「幽霊……では無いな。『人外探知機』は霊にも反応する。

 それが無反応という事はない」


琉絆空が天井を見ながら話す。


「今だけいないんじゃないですか?」


その質問に彼は首を横に振り、


あやかし、妖怪の類ならともかく―――

 何度も事故が発生しているという事は、地縛霊である事が考えられる。


 少なくとも建物の中にはいるはずなんだ」


「そういうものですか……」


怪異相手には実績のある一族の言葉に、同行した特別第六課の面々はうなずく。


「あれ?」


その時、ふと職員の1人が声を上げる。


「どうしたんだ?」


「いや、一瞬だけ『人外探知機』が反応したような。

 気のせいか?」


みんなで集まって彼の計器をのぞくが、そこに何の反応も無く―――


「今回はこれくらいでいいだろう。

 霊の仕業ではないとわかっただけでもお手柄だ」


琉絆空が撤退を決めると、彼が上司のように第六課のメンバーは従った。




「……まずいな。捜査機関の動きが早い。


 あの『処分場』に近付くのはしばらく止めるようにと、

 他のメンバーに伝えるか」


彼らが撤退を決めた時、空にはカラスのような真っ黒い羽をまとった

人外がいたが―――

それに気付く者はいなかった。


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