第195話・調査01


「ん? 安武やすべ亮一りょういち


 確か例のドラッグによる一時的な精神錯乱で勾留していたヤツだな。

 また何かやらかしたのか?」


極秘裏に新設されたあやかし対策課、特別第六課。

そこへ新たな情報が入って来た。


「いえ、入院したそうです。

 何でも郊外の廃ビルで倒れていたそうで。

 床が抜けた階でそこへ落ちたんだとか」


それを聞いた職員の一人は顔をしかめ、


「ただのバカじゃねぇか。気の毒とは思うけどよ」


「で? それがどうしたんだ?」


他の職員たちも聞いて寄って来たところで、報告に来た若い青年は

続けて、


「は、はあ。

 実はその廃ビルは地元では有名な心霊スポットで―――


 彼は救急車で運ばれたんですが、その救急車を呼んだのは

 匿名の人物であり、廃ビルから叫び声が聞こえたので

 念のため通報したと。


 それとその廃ビルは、先ほども言いましたが有名な心霊スポットで、

 よくケガ人が出るそうです」


周囲の人間は顔を見合わせ、


「まあ確かに特別第六課ウチっぽい案件ではあるが」


「でもココが新設されたのって、例の人間ベースのあやかしの組織に

 対抗するためですよね?」


「こんな事に時間をかけているヒマがあるかなあ……」


職員たちは口々に消極的な意見を述べるが、


「ふーん」


と、報告者の後ろからその書類をのぞきこむ青年がいた。


「み、弥月みつきさん」


そこにいたのは、弥月琉絆空るきあ―――


特別第六課設立に伴い、相互協力の名の下に呼ばれた一族。

そしてしばらくは妖相手の捜査の仕方や戦い方を指導していた、

弥月家の息子である。


彼はその書類に目を通しながら、


「えーと、『男を追って行ったら急に床が消えたと―――』

 『男が立っていた場所に行ったら、そこが吹き抜けだった』

 ケガをした連中はみんな同じような事を言っている、か。


 じゃ、時間が空いている人だけでも行ってみましょうか。

 ウチが使っている『人外探知機』貸すから。


 それとその安武氏には、誰か話を聞きに行ってください」


琉絆空主導の下、特別第六課は動き始めた。


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