第194話・廃ビル03
「へっ、ビビっていたとはいえ階段を駆け上がるたぁな。
自分で行き止まりに走ってどうすんだ? あぁ?」
長身のアラフォーの男が、自分より10cmは低いであろう青年を
廃ビルの一室へと追い込み―――
余裕ぶった態度で足を止める。
夕方とはいえ、電気のついていない部屋は薄暗く、部屋の中央にいる
20代の彼を窓側からの光源で浮かび上がらせる。
「ああ、そういえばですね……
ここ有名な心霊スポットだとお話ししましたっけ?」
「あぁん? だから何だってんだ。
取り敢えず一発ボコしてから話は聞いてやるよ」
「いえね、ある事で有名なんですよ。この心霊スポットは―――」
「わかったわかった。殴られている間は黙れ、な?
口の中切るかも知れねぇから」
そして手を伸ばすと、そのまま彼の体重は片足から無くなり、
「っ!?」
部屋の中央、青年の前……いや、青年を中心とした場所はおよそ
直径5メートルほどの穴が空いており、
吹き抜けのようになったその穴から、亮一は下の階へと落下した。
そして青年は階段を下りて、動けなくなった金髪のチンピラと再会し、
「だから人の話は最後まで聞きましょうよ。
ここ有名なんですよねー。
何でも、男を追って行ったら急に床が消えたとか―――
男が立っていた場所に行ったら、そこが吹き抜けだったとか。
何人もけが人が見つかっているんですが、口を揃えてみなさん
そう仰るそうで」
亮一は打ち所が良かったのか、幸いにも致命的なダメージは
無さそうだったが、
彼の言葉に反応するどころではないらしく、ただ苦痛に身をよじる。
「しかし『
人間、愚かさには限界が無いんですねえ。
ま、一応救急車くらいは呼んであげましょう」
亮一の耳にその声は聞こえていたが、内容まで理解するには余裕が無く……
やがてそのまま意識を手放した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます