第270話・宴会01


「それじゃ、乾杯!」


「「「かんぱーい!!」」」


老舗旅館『源一げんいち』で―――

全員がいっせいにコップを掲げ、隣りの相手と打ち付け合う。


集まったメンバーは大所帯で、まず俺と裕子さん、倉ぼっこの理奈。


川童かわこの銀に鬼娘の舞桜まおさんと……

それぞれの相手、弥月みつき兄妹の妹である加奈さんに兄の琉絆空るきあさん。


野狐やこである詩音、それに例の女子高生3人組―――

卯月うづき瑠奈るなさん、速瀬はやせ水樹みずきさん、もみじ一花いちかさん。


と、こちらは11人。うちあやかしは4名。


「こうして見るとずいぶん多いな……

 まあウチが言えた事ではないが」


あちらの代表である雲外鏡うんがいきょうさんがつぶやく。


その両隣りには、眼鏡をかけた飛縁魔ひのえんまさんに短髪のボーイッシュな雪女さん。

そしてそれにちょっかいをかけようと周囲をウロウロする猫又ねこまた麻夜マヤさん。


また烏天狗からすてんぐさんと煙羅煙羅えんらえんらさんが―――

一つ目小僧の人見ひとみ君と、唐傘からかさお化けの時雨しぐれさんと一緒に

男性陣で固まっていた。


向こうは8人。元人間かどうかを考えなければ全員が妖怪だ。

合計19人中12名が人外と、少し前までは考えられない宴会に

なっていた。


「いやあ、こんなに若いお客さんがたくさん来たのは、いつ以来かねえ」


料理を運んだり食器を片付けたりしながら、女将さんが話す。

実際、こちらの女子高生3人組とあちらの人見君は、かなり平均年齢を

下げているだろう。


そうなるとそろそろアラフォーになる自分が一番年上になるのか……

あ、でも妖怪たちはそれこそ百年単位で生きているから足して2で割って……

うーん、わからん。


「はー、和泉いずみさんって男性なの!?」


「私たちの彼氏でーす♪」


向こうでは詩音&3人組が別の中居さんらしき人と楽しく話し、


「あらぁ~、隠橘おきつさんってこちらの出身なのね」


「そうなんですよ~」


「じゃあ絶対、彼氏さんにはこっちで結婚してもらわないと」


と、あちこちで旅館の人も入り乱れての飲み会のようになってしまっていた。


「おいおい、いくら顔見知りがいるとはいえ金もらってんだから―――」


「いえ、こちらも無理言って旅館で働かせてもらえている身だっぺよ」


「ちょうどいい機会だから、普段の様子も聞きたいですし。

 まま、どうですか一杯」


板前らしき人の注意に銀と俺がフォローに入り、お酒を勧める。


「そーですよもー、銀ちゃんも人見ちゃんも時雨ちゃんも……

 旅館ウチの立派な看板息子です!

 あ、もちろん麻夜ちゃんも看板娘よ」


と、職場での評判は上々で何より。


「……いやいや、男に甲斐性がありゃいいんですよそんなの」


「むしろ自分たちで養ってやるって気概くらいないと」


「そっそうですよね……!」


「今は主夫も珍しくないですし……」


いつの間にか裕子さんと理奈が、飛縁魔さん・雪女さんと小声で何やら

話し始め、


「うぉーい独身組、飲んでるかー?」


「余計なお世話だ」


「僕にもいい人がいればなぁ」


麻夜さんが烏天狗さん、煙羅煙羅さんに絡むと、


「あら~、じゃあ親戚の子とお見合いしてみる?」


「あの子か? 確か跡継ぎがいないって話じゃなかったか?」


「そ、だからこっちに婿入りしてもらう事になるけど」


「ちょっ、いきなり重いですって!」


と、宴会はいろいろ盛り上がっていった―――


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