第269話・あやかし(人間ベース)の現状02


「やれやれ……落ち着いたか」


「はい……雲外鏡うんがいきょう様」


「面目ありません」


リーダー格の青年に言われ、飛縁魔ひのえんまと雪女は気まずそうに頭を下げる。


「しかしまあ―――実際のところどうするんだ?

 俺たちの目標、裏の経済を牛耳るって話は」


「警察に目を付けられている以上、あまり派手な事はもう出来ない

 だろうけど」


烏天狗からすてんぐ煙羅煙羅えんらえんらは、現実的な視線で語る。


「いや、俺はそれをまだ捨ててはいないぞ?


 現実に政治家や与党と癒着している企業はあるし、その対抗馬としての

 価値を見出せば、裏で警察と繋がっていても問題は無い。


 むしろお目付け役としての重要性……

 司法にも政治にも、裏社会にもにらみが効く存在となれる。

 そしてあやかしにも、な」


雲外鏡は淡々と語る。


警察や弥月一族の介入を、邪魔に思う事なく―――

逆に利用出来ると思っているのだ。


「それでこそ雲外鏡様」


「一生ついていきますわ」


女性陣はその言葉に同意し、再び頭を下げる。


「それに、彼らと接触出来た事はかえって良かった。


 いずれ『』とも関わる可能性があった事を考えると」


「……『マ』?」


「何ですか、それ?」


男性2名が彼の言葉に聞き返す。


「妖怪より上の存在がいる。

 鬼や天狗というものではなく、別格・別次元のもの―――


 妖怪の最高戦力を抱えたとしても、なるべく戦いたくない相手だ」


雲外鏡がそう言うと、4人がゴクリと唾を飲み込む。


「味方に引き入る事は出来ないのですか?」


雪女が彼に問うと、


「どうだろうな。意思疎通は出来そうな感じだが……


 言ってみれば上位存在。人間でいう神のようなもの。


 どこまで話が通じるか、だな」


そこで雲外鏡は一息つき、


「まあ、そうそう出会える存在でも無いと思う。

 それより、例の会合のため、ちゃんと予定は空けておいてくれよ」


「「「はいっ」」」


そこで彼らの話し合いは一段落した。


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