第250話・移住者1号04


「あっ! そういえば……」


朝食を食べ終わり一息付いていた頃―――

銀が急に何かに気付いたように声を上げる。


「どうしたんだ、銀」


「オラ、旅館の人たちに『同年代の人が来る』って言っちまってたべ。

 でも人見ひとみ君はどう見ても子供だし、どうするっぺか」


あー、それは確かにマズいな。

向こうだって土地建物を買ってもらう前提でいるだろうし、子供だと

話が違うって事になる。


それを聞いた『一つ目小僧』の彼も困惑した表情になるが、


「いや、それくらいなら問題は無いだろう。


 今回の話を聞いた親戚か知り合いが、事情のある子供を

 預けたいと言ってきたと……

 そういう具合に話を持って行けば」


さすがは向こうのあやかしたちが認めていたリーダー、頭の回転が早いのか、

雲外鏡うんがいきょう』さんがすぐに解決策を示す。


「だが、残りの妖もこうなると少し問題だな。

 自分が覚醒させたら子供の姿、というのは―――」


「他の妖もみんな子供、もしくは小さいんですか?」


俺が聞き返すと彼は両腕を組んで、


「どうだろうなあ……

 他に『猫又ねこまた』と『唐傘からかさお化け』がいるが、


 いやでも、『猫又』は子供という外見では無いし、『唐傘お化け』に

 至っては老若ろうにゃくそのものがわからんし―――」


「『猫又』は多分、大人で大丈夫じゃないでしょうか。


 『唐傘お化け』は……やってみないとわからないと言いますか」


人見君の言葉に『雲外鏡』さんは相槌あいづちを打ち、


「そうだな、とにかく連絡をしてみよう。

 『一つ目小僧』の覚醒と、自分たちも覚醒を望むかどうか―――」


そう言いながら彼は、自分のスマホの操作を始めた。




『あ、どうしたの『雲外鏡』様ー?』


『もう帰って来るのか?

 あ、お土産は食べ物で』


通話画面にあちらの妖2名が写る。

なるほど、確かに『猫又』と『唐傘お化け』だ。


「2人とも、『雲外鏡』様から話があるんですから静かに」


そこで人見君が割って入るが、


『お? 誰その子ー?』


『あり? 迎え入れてくれる家って神社だったっけ?』


あちらの人外2名は人見君を見て質問する。


「彼は『一つ目小僧』だ。

 今日覚醒して、人の姿になった」


『雲外鏡』さんの説明を聞いた彼らはポカンとなって沈黙し、


そしてスマホが壊れるんじゃないかと思うくらいの絶叫を上げた。


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