第249話・移住者1号03


「おお、人間の姿になりましたね!」


「しかしまだ子供の姿だっぺ。

 オラたちの時は大人になったってのに、どういう事だべか」


翌朝、朝食に彼ら―――

雲外鏡うんがいきょう』さんと『一つ目小僧』の『人見ひとみ』君を

呼びに行ったところ、すでに覚醒していて、


神主のような衣装に身を包んだ、片目を髪で隠した12・3才くらいの

少年がいた。

何というか線が細く中性的で、女の子と言っても通ってしまいそうだ。


「本来なら大人になるはずなのか?」


「俺の時はそうでした。理奈も銀も詩音も……」


細面の青年は聞き返し、俺はそれに答える。


「もしかしたら、だべが―――」


そこで銀が口を挟み、


「原因がわかるのか?」


「『雲外鏡』さんは元人間と言えど、今はあやかしだっぺ。

 それで効果が半減したんじゃないだべか」


「むむ……」


銀の説明を聞いて彼は黙り込む。


そういえば妖怪は、人に怪異と認められて存在出来ると聞いた。

ならば、すでに妖怪となっている『雲外鏡』さんに名付けられたところで、

という事か。


「……悪いな、人見」


「い、いえ!

 僕は『雲外鏡』様に名付けて欲しいと願っておりましたから」


彼が謝ると、人見君は慌てて首を左右に振る。

結構冷淡なイメージがあったけど、意外な一面を見たようで自分も驚く。


「だけどどうしてこんな神主さんのような姿に。

 古風なのは妖怪としておかしくはないですけど」


「もともと『一つ目小僧』の目が一つしか無いのは―――

 目が2つある人間では神の御業みわざは見れないと、神職の者が片目をわざと

 潰したのが由来という説もある。


 そういう解釈というか念が、『人見』を妖怪たらしめているのだろう」


『雲外鏡』さんの説明を聞いて俺は目を丸くする。

『一つ目小僧』といえば妖怪の中でもポピュラーで、ユーモラスな

イメージがあったのだが……


「とにかく朝食にしましょう。

 その後、彼が覚醒した事を各方面に知らせないと」


「そうだな。

 情報共有はしておいた方がいい」


ひとまず俺たちは、食事を取るために食卓へ向かった。


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