第239話・解決02


「どーもー。

 じゃあまた、頂いていきますねー」


「お疲れ様ですー。

 こちらこそありがとうございましたー」


東北にある実家で―――

俺は老舗旅館『源一げんいち』の人たちを見送った。


倉ぼっこの理奈がほとんど東京を拠点にして働く事になったので、

木の実や山菜の類が一時取り引きから無くなったが、


そこは野狐やこの長老たちがカバーしてくれて、

量的にも問題は無くなった。


また、野狐たちは鬼のぬし様に鍛えられ、狩りでもその実力を発揮。

最近は野ウサギの他、まれにイノシシなどを捕まえて来るようになり、


魚の方も銀が『源一』で働きながら安定して供給していた。


「……やれやれ。


 やっぱり俺には、田舎の方が合っているのかな」


結局、人間ベースの人外組織との戦いは―――

大人しくしてもらう、という事で幕引きとなった。


その代わり弥月みつき一族を通して、特別第六課との協力を強化。

さらに彼らから入手した情報を他の課に融通する事により、影響力を

増しているらしい。


そもそも、現行法では取り締まれる存在ではないし……

なるようになった、というところか。


そして俺たちにも日常が戻り、週末には恋人の裕子さんや理奈と出会う、

そんな日々を送っていた。


今では鬼の舞桜まおさんも琉絆空るきあさんと一緒にいるために、

月~金は東京の彼の実家に居候し、


こちらの山には、週末だけ彼と一緒に戻って来るという生活スタイルに

なっていた。


詩音も裕子さんの家で過ごしているし、あの女子高生3人組と

本格的に暮らすため―――

近いうちに同じマンションの別の部屋を借りて移り住むらしい。


基本的にこちらをメインで暮らしているのは、俺と川童かわこの銀だけ。

変わった事と言えば、俺のスマホの連絡先が増えたくらいか。

とは言っても、第六課関係がほとんどだけど。


「……ん?」


そこで俺のスマホがちょうど鳴り始め、通話ボタンをタップする。


「もしもし? ……あ、『雲外鏡うんがいきょう』さん?」


通話先は、あの人間ベースの人外組織のリーダーだった。


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