第92話・兄妹喧嘩・02
「えーと……兄妹仲がお悪いんですか?」
とにかく訪問者である彼を中に入れ、遅い朝食を振る舞う。
「そういうワケでも無いんですけどー、すごく私に対して過保護っていうか?」
「いやだって、お前が近頃お兄ちゃんに無断で泊りがけの旅行なんて行くから、
心配で心配で」
「な・ん・で! お兄ちゃんに断る必要があるのよ!
それに会社の上司の人と一緒にって言ってあったわよね?」
最低限の情報は渡してきたって事か。
それに相手は
今、食卓についているのは俺・裕子さん・そして弥月さんとその兄で……
人外3人組は遠巻きにそれを見守っていた。
多分、彼にも当然『見えている』んだろうけど―――
それはおくびにも出さず、食事を続ける。
そして彼らの視線に気付いたのか、彼はそちらへ顔を向け、
「そんなに警戒しなくても大丈夫だ。
今回はプライベートで来ているからな」
それを聞いてようやく、理奈・銀・詩音はホッとした表情になる。
「……さすがにあの3人に手を出したら、お兄ちゃんといえど
ぶっ飛ばすからね」
それを聞くと彼はふぅ、とため息をついて、
「あのなぁ、
自分だってそりゃ見逃せるヤツは見逃す。
だが、そんな人間の好意につけこみ、利用する妖だっているんだ。
―――考えてみろ。
お前の目の前にいるのが子熊だったとして、その未来の姿を知っている。
そいつらが人間と同じような知能と感情を持ち、人間に紛れ込めると
したら?
殺すはずだ、ためらわず」
彼の言っている事は正しい。
実際、あの3人組は非合法組織と銃器を相手に圧勝している。
その気になればとても危険な存在となり得るのだ。
「ですが、それは人間だって同じでしょう。
実害が無いうちに殺すなんて、通り魔と何ら違わないじゃないの」
裕子さんがその話に割り込む。
「そうだ、人間だって同じだ。
強力な力を持った者が
力におぼれて暴走する可能性の方が
そうじゃないか?」
裕子さんに言い返す。
正直、この問答に絶対の答えなどない。
どちらも正しく、そして正解とはいえない。
「俺は身内なら妖でも守るよ。
逆に人間の家族でも、悪い事をすれば
「……まあ、そうだな」
俺の言葉に兄―――
「自分が来た理由はまあ、
別に
「さすがにそんな度胸はありませんね」
そのやり取りに女性陣が笑い出し、ようやく和やかな雰囲気になった。
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