第20話・結果報告
『おぅ
「何の用だ? 社会の底辺ゴミクズカス」
数日後、勝ち誇ったかのように電話をかけてきた
『強がってんじゃねぇよ。
で? 少しは考え直したか?』
「相変わらずお前の話には主語が無いな。
お前とデータベースを共有しているわけじゃないんだから、
少しはわかりやすく話せ」
俺が一切の動揺なくしゃべっている事が想定外なのか、
通話先で困惑する様子が伝わってくる。
『か、会社から何か無かったのかよ』
「ああ、嫌味を言われたよ。
『何であんな迷惑な身内がいるんだ?』って遠回しにさ。
本当にお前、人に迷惑をかけなけりゃ生きていけないのな」
副業をしているとか密告したつもりなのだろうが―――
そもそも『副業』ではない。
確かに多少関わってはいるものの、それで利益が上がっているわけでは
ないのだから。
「ついでに言うと国税の職員も来たぞ?
『金のやり取りをしているわけでも無いのに、どうやって税金が
発生するんだよ』って旅館の人が怒っていたなー」
『は、はあ!? お前、アレ売ってないのかよ!!』
そこで俺は大きくため息をついて、
「……あのなぁ。俺は社会人やっているんだよ。
無職のお前と違ってな。
お前、確定申告とか年末調整とかやった事ないだろ。
それが面倒だから物々交換にしてもらってんだ。
いやー、あの職員の人も恥かいてかわいそうだったよ。
誰が俺と旅館が売買取引しているなんて適当な事言ったんだろうなあ。
いやー本当かわいそうかわいそう」
俺の
耳を離すと同時に何かの破壊音が聞こえた。
まあもう慣れたものだ。
しかし勝手に勘違いして勝手に自爆して文句を言われるのもなあ。
自爆するなら一人で〇ねっての。
これでしばらく大人しくしてくれればいいが―――と思っていると、
「どうしたの、ミツ?」
倉ぼっこがいつの間にか俺の部屋に入ってきていて、
「いや、たいした事じゃない。
それよりあの国税の人、もう来ないのかな。
俺はともかく旅館からはクレームが行っているだろうしな、と思っていると
「もう来ないんじゃないですか? あの人」
「オラもそんな気がするっぺよ」
まあそれならそれでいいか……
そこで俺は『源一』からもらったものを思い出し、
「そういえばこの前、旅館の人がお酒置いていってくれたんだが。
お前ら飲めるか? 俺は日本酒が苦手でなぁ」
すると倉ぼっこが少し悩むようにアゴに手をやり、
「んー、僕は軽い方がいいかなぁ。カクテルとか発泡酒とか」
「アタシもそうですね。ただ長老や仲間なら飲むと思います」
「オラは飲めるなら何でもいいだべ」
野狐も川童も彼女に続き―――
日本酒は1・2本ばかり家に残し、残りは次の機会に野狐に持っていって
もらう事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます