第244話・依頼05


「それでどうなったんですか?」


東北にある俺の家……

眼鏡をかけたセミロングの秘書風の女性が、荷物を解きながら

俺に問いかける。


「取り敢えず1人―――準備が出来次第送って来るそうだ。


 それで様子見して、もし移住出来そうなら順次送ると」


「おー、そうなんだー」


黒髪ロングストレートの、童顔の倉ぼっこが飲み物を口にしながら続く。


今週末は裕子さんと理奈が俺の田舎に来るローテーションで、

彼女たちの荷解きを手伝いながら、例のあやかしの移住要請について

俺は説明していた。


弥月みつき家には昨夜、銀と一緒に伝えたけど……

 舞桜まおさんから名付けしてみて、それで覚醒したら

 アタイが鍛えてやるって言ってた」


「という事は、人の姿ではないという事?」


裕子さんが聞き返して、俺はそのままうなずく。


「まー、ある程度認識してくれている人がいないと難しいんだよね。

 人の姿になるのって。

 それ以前、全く見えない場合がほとんどだし」


「それに理奈は倉ぼっこだから、まだ驚きは少なかったかも知れないけど、

 銀が川童かわこの姿のままだったらなあ。

 普通の人間なら出会って即逃げるか気絶するかの二択じゃないか?」


俺がこの土地屋敷を買い取った頃―――

彼らと最初に出会った時の記憶を引っ張り出す。


「で、その山ちゃん? という方の土地と家を安く買えるという

 話になったんですよね?」


「うん。どうやら移住希望者は複数いるっぽいし……

 山小屋とか、確保出来るところが多ければ多いほどいいと思う」


裕子さんの質問に答えると、そこで俺は一息つき、


「―――という話を彼らと一緒にしたかったんだけどなぁ」


実は今週末は弥月兄妹と、その相手である舞桜さんも銀も一緒に

来ていたのだが、


到着と同時に銀と加奈さんは離れに、舞桜さんは琉絆空るきあさんを荷物と

一緒に抱えて、文字通り『飛ぶように』山へと走り去った。

(なお詩音は女子高生3人組と共に東京待機)


「まー発情期だししゃーないしゃーない」


「わかりやす過ぎるけど言い方ァ!!」


俺が叫ぶと裕子さんが俺の服のすそをつかみ、


「ま、まあそういう事ですし……ね?」


「お風呂はもうセットしたんでしょ?

 まずは『汗を流しましょー』♪」


そして俺は2人に連行されるように、寝室へと向かった。


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