第245話・依頼06・雲外鏡視点02


「さて、と……

 お前たちを呼び出したのは他でもない」


都内にあるマンションの一室で、細面の青年が明らかな異形の者たちと

向かい合う。


「何でしょうか、『雲外鏡うんがいきょう』様」


鼻の上にギョロリとした一つ目を持つ、僧衣を羽織った子供がまず口を開き、


「何か食わしてくれるのかニャ?」


「他の4人はいないようだけど」


ミュージカルの着ぐるみのような、全身を体毛に覆われた獣人のような

女性と、


もう1人? は人の姿すらしていない、大きな傘のような一本足のオバケが

言葉を発する。


俺は元人間の『雲外鏡』。

そして目の前にいるのは―――『一つ目小僧』に『猫又ねこまた』、そして

唐傘からかさお化け』。


かつて俺たちのプロジェクトに協力者として参加させていた低級妖怪だが、

雑用くらいにしか使えず……


今回は今後の処遇を伝えるために、俺が呼び出したのである。


「まずは今までの協力、ご苦労だった。


 俺たちの計画だが、警察に目を付けられた。

 さらに弥月みつき家という、あやかしを狩る一族に先日―――

 ここまで乗り込まれてしまった。


 彼らとは和解したが、今後は今までのように大っぴらに活動するわけには

 いかなくなった……」


「用無し―――という事でしょうか」


一つ目小僧の言葉に、他の二人の妖は動揺するが、


「そうは言っていない。それに弥月家にも妖の協力者がいてね。

 また妖怪に対する理解者もいる。


 ほとぼりが冷めるまで、そちらに行ってみるのはどうだろうか。

 実は話はすでに付けてあるのだが」


すると『猫又』と『唐傘お化け』はホッとしたように、


「あぁ~……良かったニャ。

 捨てられたらそのまま『雲外鏡』様の愛人にシフトする予定だったニャ」


「えっと、嫌だが?」


「でもどこですか?

 あまりネット環境が厳しいところだと拒否権発動も辞さない」


「東北だが、まあ―――

 今の日本で離島でも無い限り、そんなに差は無いんじゃないか。


 というか『唐傘お化け』、お前どうやってキーボードや端末を

 操作するんだよ」


「え? 指ですが『雲外鏡』様」


一本足の指をくねくね動かして見せる。


「器用だねキミ……」


そこで俺は一息ついて、


「だが、お前たちに取っては寝耳に水の話だし―――

 全面的に信用しろと言っても難しいだろう。


 そこでまずは、誰か1人先行してそちらへ行って欲しい」


俺の言葉に、彼らは視線をこちらへ集中させた。


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