第304話・十六夜一族VS人妖混合チーム03


「……あれが目白めじろ家か」


「このさらに奥の山に、鬼が住んでいるらしい。

 妖力ようりょく反応もいくつかあるが、鬼ほどの妖力は感じぬ。


 つまりあの家に今、鬼はいない。

 あそこを占拠してから、山奥にあるトレーラーハウスとやらに

 突撃するぞ」


暗視スコープで確認しながら言葉を交わす男たち―――

襲撃に来た十六夜いざよい一族の一部隊、『月』である。


彼らは慎重に距離を詰めて行き、


「まだ明かりが点いているな」


「人間も住んでいるという話だ。

 だが油断はするなよ。弥月みつき一族の誰かがいる可能性もある」


「田舎の家は出入り口が多い。

 各所から一気に入り、制圧する。


 全員囲め! 一ヶ所につき2人以上で突入を……」


そして彼らが、目白家の敷地内へと足を踏み入れた瞬間、

全員のトランシーバーから一斉に声が入って来た。


気付かれてはならないと、リーダー格の男が慌てて

その無線機を取って対応し、


「こちら『月』部隊。どうし―――」


『誰かいないか! こちらは失敗した!!

 繰り返す、失敗した!!』


その声を聞いた彼らは顔を見合わせる。

しかし表情に動揺の色は無い。


実は彼らは、駅から今までの間……

野狐やこの気配を察知していたが、それをあえて気付かないフリを

続けていた。


それは襲撃を察知した彼らが逃げ、作戦自体が失敗に終わる事を願っての

ものであり、


「了解。『影』部隊は失敗したのだな?


 となるとこちらも単一での作戦は実行不可能だ。

 『影』部隊は直ちに撤退し―――」


『ちっ違う!!


 こちら『影』部隊はもう逃げるどころじゃない!

 味方は全員返り討ちにされた!!


 お、俺もどこまで逃げられるか』


最悪の報告に、彼らは顔色を変える。


「どういう事だ!?

 そちらの方に鬼がいたのか!?」


『違う! 見た事も無い化け物がいたんだ!!


 そいつは角や牙こそ無かったが、目と耳が2つずつあり、

 鼻と口が1つずつという恐ろしい見た目で―――』


「何だと!?


 ……っていやお前、そりゃ普通じゃねぇか?」


焦る口調につられたが、リーダー格の男は冷静になって聞き返す。


『あ、バレた?』


「っ!? 何者だ貴様!」


リーダー格の男が問い質すと同時に、


「くっ!!」


「ぬうっ!?」


と、他の『月』部隊メンバーの声が上がる。


見ると、弥月みつき兄妹がそれぞれ1人ずつ『月』部隊を

取り押さえていて、


「集まれ!!」


そこでリーダー格の男が距離を開け、捕まらなかったメンバーが彼の周囲を

囲むように円陣を組む。


訓練されたであろう動きで、その動作が終わるまで3秒もかからず、


「一ヶ所に固まってくれるとは好都合だっぺ」


その声と共に、3メートルほどの高い波が突然発生し―――

川童かわこの銀による水術が、彼らを飲み込もうとしていた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る