第303話・十六夜一族VS人妖混合チーム02


「よし、この辺りでいいだろう」


「全員着替えろ」


夜、真っ暗な山道の中―――

車から降りて来た男たちはそれぞれ、服を脱ぎ装備を見に付けていく。


着替え終わった彼らは、黒い布地の和装に上に、特殊部隊が着るような

ベストに身を包み、


「無線を確認しろ。あちらに連携されると厄介だ。こっちが先に、同時に叩く」


「鬼側じゃなくて運が良かったのか悪かったのか……」


「事前情報だと俺たちの方にいるのは―――

 一つ目小僧、猫又ねこまた唐傘からかさお化けとの事だ。


 またこの一帯に住む野狐やこたちとも友好的らしい。

 場合によっては、そいつらも敵に回る事を覚悟しろ」


そして最後に暗視ゴーグルらしきものを顔にかけ、見た目は完全に

特殊部隊のようなちとなり、


「よし……!

 全員、戦闘準備は済んだな?

 長老に連絡する」


するとリーダー格の40代くらいの男が無線を取り出し、


「こちら『影』部隊―――

 配置に付きました。


 いつでも出撃出来ます!」


『そうか。こっちの『月』部隊も今準備を終えた。


 今から15分後に行動開始じゃ。抜かるでないぞ』


無線を切ると、彼は遠くへ視線を移す。


「気付きましたか?」


「ああ、野狐だな。

 我々が街から出る……いや、その前あたりか。

 その時からずっと気配を感じていた。


 彼らだけでも逃げてくれればいいのだが」


十六夜いざよい一族の中でも彼らは指折りの実力者であり―――

長老ほど好戦的ではないだけで、それなりの戦闘能力の持ち主でもある。


そして彼らはその場で座り込み、その時を待った。




「……というわけで、ここから走って10分ほどの位置に彼らは

 待機しています。


 法力ほうりきもとても高く、一筋縄ひとすじなわではいかないかと」


十六夜一族の『影』部隊の動きを監視していた野狐の一人が、

一つ目小僧たちが集う屋敷に駆け込み、情報を伝える。


「わかった。

 それと―――事が済んだら無線機を奪って欲しいと、

 安武やすべさんから言われている。


 一応、こちらで全員捕獲するつもりだが、もし連中が落としたりしたら

 その回収も頼む」


「わかりました」


人間の青年のように見える野狐は、そのまま闇の中へと走り去り、


「では、やるとしようか。


 人見ひとみは俺と共に待機。

 まずは手筈てはず通りに煙羅煙羅えんらえんらが接触しろ。


 次に烏天狗からすてんぐ、そして時雨しぐれが出る。

 頃合いを見計らって麻夜マヤ、仕上げに雪女だ。


 それが終わったら飛縁魔ひのえんま、お前の出番となる。

 やつらが行動を開始する前に出鼻を叩く」


雲外鏡うんがいきょうの指示に―――

天然の妖怪と元人間の妖怪たちがうなずいた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る