第163話・人間ベース01


「ごちそうさま」


「ごちそうさまでしたー!」


俺が作った昼食を倉ぼっこの理奈がすっかり平らげ、満足そうに挨拶する。


片付けをしながら話の方向性を俺の愛人・二号化から避けるため―――

詩音に起きた話をしてみると、


「あー、人間ベースって事でしょ、アレ」


「人間ベース?」


理奈がお茶に梅干しを入れながら、何気ない事のように語る。


あやかしにはねー、3種類いるんだよー。


 1つは確固とした妖。

 これは最初から妖という存在で、鬼の舞桜まおさんや川童かわこの銀ちゃんが

 これに当たるかなー」


ずずっ、とお茶を飲みながら話し、


「もう1つは野狐やこの詩音ちゃんみたいに、動物が妖と化したもの。

 多分このパターンが一番多いんじゃないかな」


狐やカワウソが妖怪のモデル、っていうのは結構聞く話だしな。

そして彼女は続けて、


「んで最後に元は人間だけど妖になった場合。


 有名どころだと泥田坊どろたぼうや、鉄鼠てっそになった頼豪阿闍梨らいごうあじゃり

 これに当たるよー」


ふむふむ、と俺は素直に感心する。


「いや、自分たちの存在の事―――

 よく勉強しているんだな」


「そりゃPCやスマホとかでいくらでも検索出来るからねー。


 便利な世の中になったもんだよ、ホント」


理奈はそう言いながらスマホをひらひらとさせて見せてくる。


「……?

 いや、そういうお前はどうなんだ?」


銀、詩音、舞桜さんの事はわかるけど―――

あえて自分の事を語らなかった彼女に質問をぶつけてみると、


「え~? どっちだと思う~?」


「いきなりキャバクラのねーちゃんのような誤魔化し方をするな。

 最初から妖だったのか人間ベースかのどちらかだと思うが」


すると彼女は遠い目をしながら、


「……忘れちゃったかなあ。


 倉ぼっこや座敷わらしってたいてい、幼い頃に命を落とした幼子が

 ベースになっている事が多いしねー」


俺はそこではたと気付く。


そういえば人間ベースで幼子と言えば……

何らかの事情で成長出来なかった子供や、間引きが元になっていると聞いた事も

あるし。


「すまない、悪かった」


「ハー○ンダッツ様召喚で手を打とう」


「ア○ゾンを召喚と呼ぶな。わかった、注文しておくよ」


そこで俺は、自分のスマホ画面をタップし始めた。



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