第135話・弥月加奈視点06


「……とゆー事になりました、部長」


「まあ、メールで事のあらましは受けっていたけど、お疲れ様」


鬼っ子である舞桜まおさんが、弥月みつき兄妹の両親との顔合わせが

決まった翌日の昼、


私は直属の上司である武田部長に昼食がてら、事情を説明していた。


「でも思ったよりスムーズに事が運んで良かったじゃない」


「あ~……お母さん甘く見てましたよ。

 悩んでいたのがバカみたい」


大衆食堂っぽいところで定食を食べながら、女性二人で話し合い、


「お父さんの方はどうなの?」


「そっちは割り切っている感じですね。

 まあ一族ウチの事情を考えるのなら、断る理由も無いでしょうし」


鬼が協力者として得られるのであれば、多少のデメリットは容認するだろう。

戦力としては申し分ないはず。


そして、琉絆空るきあお兄ちゃんが舞桜さんとくっついてくれれば、

私と銀様の仲もバックアップしてくれる事になっている。

何としてでもそのためには、あの2人の仲が認められないと。


「でも、出会う場所はどこなの? やっぱり実家で?」


「そこはまだ決まっていないですけど、相手に合わせるんじゃないですか?

 いろいろ都合とかあるでしょうし」


あやかしによってはその場から離れられない事もある。

妖を狩る使命を持つ弥月一族は、その辺の事情も知っているので―――

そのあたりは問題無いと思う。


「そういえば詩音しおんさんはどうしてます?

 彼女は東京に残っているんですよね、確か」


私の紹介でメイド喫茶で働く事になった野狐やこさんだけど、

今は東京の部長の家に居候しているそうで、


安武やすべさんの家に帰る時は、彼女(男の娘だけど)と私と一緒に

3人で、という事になっている。

ちなみに倉ぼっこの理奈さんは、部長の彼氏である安武さんとスケジュールを

共にしている状況だ。


こうして見ると武田部長と安武さんは、恋人がいるのに他の異性と

行動を一緒にしている事になるけど、


詩音さんはまあ異性としての認識は部長に無いだろうし、

理奈さんも女性陣としての結束は固いから、間違いは起きないと思う。

というより間違いが起きたら、ぬし様である舞桜さんが黙っていないだろう。


「今のところ普通にしているわよ?

 休日は他のメイド店員さんたちと一緒に、案内がてら付き合って

 もらっているらしくて」


「おおー、順応してますねぇ」


私は感心しながら定食のお味噌汁に口をつけ―――


「それより早く食べないと。そろそろお昼休み終わるわよ?」


部長と2人で、通常の昼食タイムへと戻った。


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