第171話・弥月一族の戦力として04


「鬼の隠橘おきつさんは申し分ないとして……」


「いかに強い妖力ようりょくがあろうとも、倉ぼっこや河童、野狐やこ

 少々不安が残る」


弥月みつき一族の中から、鬼以外の3人組について疑問視する声が出てくる。


そこで赤い肌の抜群のプロポーションを持つ鬼娘がすっ、と前に出て、


「アタイが鍛えたと申したであろう?

 それにそ奴ら、飛び道具を持ったいわゆる反社会組織を

 一度壊滅させておるぞ?」


舞桜まおさんの言葉に、反発していた連中は一瞬黙り込むも、


「だが、どうやって?」


「それに銃くらい、たいていのあやかしには通用しないだろう」


確かに彼らの身体能力があれば、避ける事はさほど難しくはない。

そこで女子高生くらいの童顔の理奈が片手を前に差し出すと、


「じゃあ、こんなのはどうー?」


すると、各自が持っているであろう端末が一斉にうるさく鳴り始め、


「な、何だ?」


「勝手にスマホの通知が」


それぞれ、手に取ってその画面に見入る。

そして俺の隣りで裕子さんが口を開き、


「彼女は今、私の会社で働いて頂いております。


 サーバセキュリティではかなりの力を発揮しておりまして―――

 我が社にネット上からちょっかいをかけて来ると、彼女がそれをすぐに

 突き止めて、向こうのPCの主導権を乗っ取ってしまう事も」


その説明に、一族の方々は顔を見合わせる。


「ウチの一族でもそれなりに最先端技術には力を入れておりますが、

 それに特化した妖……というのはこの上無い戦力となりましょう」


琉絆空るきあさん・加奈さんの母親がそれを後押しし、


「詩音が中の人間を篭絡して乗り込んで、理奈がセキュリティ関係を

 無効化し……

 オラが物理的な攻撃を封じた、って感じだったべ」


銀が話すと同時に、目の前に透明な膜のような水の壁が出来上がる。


「他に何かご質問は?」


巫女姿の少女のような外見の妻の隣りにいた、弥月兄妹の父親が

念押しするように言葉を発し―――

そこで場はしばらく沈黙した。


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