第14話・脅迫

「……しつけぇなお前は。

 俺は無職無収入のお前と違ってヒマじゃないんだがな」


野狐やこが男のだと発覚してから数日後……

俺はクソ兄貴、亮一りょういちからまた電話攻撃を受けていた。


なるべく連絡は取らないよう対応しているのだが―――

手を変え品を変え番号を変え、こうしてしつこくコンタクトを

取ってくる。


知らない番号は基本取らないようにしているのだが、職場の個人から

かかってくる場合もあるので避けられないのだ。


『おい、それが兄に向かって言う言葉か?』


「お前に取って弟ってのは、いつでも好きな時に命令したり

 サンドバッグにしたり、勝手に物を売ってもいい奴隷の事か?

 そんな兄はいらねぇんだが」


『……チッ、ったくよぉ、昔の事をいつまでもネチネチグチグチと』


「そういうのは加害者が言っていい言葉じゃねぇんだよゴミ」


相変わらず反省のはの字も無い態度だ。

適当にあしらった後、この番号も着信拒否にするかと思っていると、


『いやまあ待ってくれよぉ。俺ちょっと困っているんだ』


「俺の物を売ったり金を奪った時、やめてくれ、それは必要なんだって

 言ったよな? そんな時お前は何て言った?


 『オメーが困るのが俺に何の関係があるんだぁ?』だっけ?」


いくら情に訴えようと、返す過去の悪行に事欠かないからなコイツは。

さすがに電話の向こうでしばらく沈黙してたが、


『そーゆー事を言ってもいいのかなぁ~?

 お前よぉ、そっちで老舗旅館と取引しているって話じゃん?』


妙な方向に話が飛び、興味が出た俺は先を聞いてみる。


「それがどうした?」


『個人売買でも税金ってかかるんじゃないのかなぁ~?

 ちゃんと対策はしているかぁ~?


 それにお前の会社、副業はOKなんだっけぇ~?』


なるほど。それで弱みを握ったと思い込んでいるわけか。


「言いたい事はそれだけか?」


俺が全く動揺しない事が予想外だったのだろう。

向こうから焦るような声が漏れ聞こえるが、


『強がってんじゃねぇよ!

 後悔してからじゃ遅ぇからな!!』


と捨て台詞を残してガチャ切りされ―――


「ミツー?」

「ミツ様?」

「どうしたんだべ、ミツ」


倉ぼっこ・野狐・川童かわこの人外3人組がやって来たところで、


「あぁゴミだゴミ。ゴミが電話かけて来たんだ」


そして俺の返答を聞いた3人組は、


「へー、最近のゴミって高性能なんだね。電話までかけてくるなんて」

「都会は進んでおりますのね」

「最近流行はやりのAIってヤツだべか」


と、裏事情を知ってか知らずか兄には触れず……

全員で笑い合った。

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