第252話・移住者1号06


「え……っ」


「送られてきた動画でも見たけどー」


「これはまた」


裕子さん・倉ぼっこの理奈・加奈さんが―――

『一つ目小僧』の人見君を見てそれぞれ声を上げる。


週末となり、今回は東京組がぞろぞろと帰還する中……

新たに覚醒した彼との初対面する事になったのだが、


「こりゃまた、えらく美しいわらわになったものよのう」


鬼の舞桜まおさんも、人の姿になった『一つ目小僧』を見てため息をつく。


「まっ、アタイは琉絆空るきあ様さえいれば十分だがな!

 ではそういう事で、さらばだ!!」


と言うや否や自分の彼氏と荷物を持って―――

そのままトレーラーハウスのある、山へと走り去っていった。


そして今回は野狐やこの詩音と、例の女子高生3人組も来ており、


「うはー、あやかしって美形さんしかいないの!?」


「あ、人見くーん。もうちょっとこっちに目線寄越して?」


「……いい……特にその和装がそそる……!」


そう言いながら彼を囲んで撮影会のようになってしまっていた。


「そういえば満浩みつひろさん、他の妖怪―――

 『猫又ねこまた』さんと『唐傘からかさお化け』さんは?」


「『雲外鏡うんがいきょう』さんが連れて来るって言ってたけど、

 まだ調整中らしい。


 『猫又』さんは誤魔化しようがあるけど、『唐傘お化け』さんは

 あの外見だから移動する時は荷物として……

 アンティークとして扱うしかないんだってさ。


 それで移動時に検査とかされた時のために、移転許可証とか

 取っておかないといけないんだと」


「そーいや、人でも動物ベースでも無い妖って初めてかも」


俺が裕子さんや理奈とやり取りしていると、


「ほらほら、3人とも。いい加減に人見君から離れなさい。

 疲れちゃうでしょ」


「あ、僕はまだ別に―――」


「それより荷物の整理がまだだっぺ?

 加奈さんもまずそっちを先にするべ」


「えっ!? は、はいっ!」


加奈さんの方を見ると、3人組のように密着はしなかったものの、

離れた場所から人見君をスマホで撮影していて、


混沌とした状況の中……

何とか顔合わせは終了したのであった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る