第126話・お仕事・理奈視点03


「どう、校倉あぜくらさん。お仕事の調子は?」


「あ、ゆっちー……じゃなく部長。これと言って問題はありません」


僕、倉ぼっここと校倉理奈は―――

ここ東京にあるオフィスで働き始め、何とか業務をこなしていた。


サポートにゆーちゃんこと武田部長もついてくれているし、

課は違うけど同じ職場にミツや加奈ちゃんもいる。

今のところ全て順調だ。


「そういえば部長、何かつっつかれたら教えてって話でしたけど、

 こっちから何かしてはいけないんでしょうか?」


「え? 何かって?」


会社ではビシッと眼鏡にスーツのキャリアウーマンとなったゆっちーが、

首を傾げる。


「反撃とか」


「は、反撃ねぇ~……う~ん」


そこでゆっちーは腕組みして考え始める。

おかしいな、僕何かヘンな事言った?


「それはちゃんと相手わかるの?」


「うん! じゃ、じゃなくて……はいっ」


ゆっちーはうなるように、その場で振り返ったり戻ったりと、

右足を軸に半回転させていたけど、


「ま、まあ、あまりしつこいようだったら許可するわ。

 でも関係無い人は巻き込まないようにね」


「わかりましたー」


そう言うとゆっちーは去っていった。

僕は自分のPCに向かって仕事を再開させると、


「……んっ?」


またPCウチのコが訴えてきた。

どうやら、またどこかからつつかれているようだけど。


「んん~? コイツこの前もつついて来なかった?」


そこでウチのコが『やり返していーい?』と聞いてきたので、


「おーいいよいいよ。部長から許可もらったから」


『やったー! じゃ、行ってくるねー』


データ上の事だけどどこに行くのかな?

難しい事はわからないけど許可は出ているし、このコの好きに

させてあげよっと。


そこで僕は、ウチのコの様子を見守る事にした。




―――都内某所―――




『なっ何だ!? マシンの挙動がおかしい!?』

『なぜだ! なぜこちらのコマンドを受け付けない……!』

『! “全ての権限はリナにあり―――” まさか、この俺がマシンを

 乗っ取られたっていうのか!?』

『やっやめろ! データを勝手にアップロードするな!!』

『やめろ!! やめろおぉおおおおっ!!』




数日後、あるハッカーが逮捕されたというニュースが流れるのだが、

それは理奈たちの知る由も無い事だった。


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