第144話・顔合わせを終えて01


弥月みつきさんのご両親と舞桜まおさんの顔合わせが終わり、

一段落したところで―――


「じゃあ、自分は舞桜さんのところに行ってくる」


「まあこれで結婚には反対されぬであろう。

 今後の事を少し話し合ってくるわ」


ほとんど身長の同じ、人間と鬼のカップルが山へと向かい去り、


「私は銀様と話し合って来る。

 お兄ちゃんと舞桜さんが上手く行ったんだから、こっちの方も進めて

 おかないと」


「そうだべなあ」


妹の方と、川童かわこが離れへと向かった。


「アタシは群れにこの事を報告して来ます。

 ぬし様の留守を守る者たちの育成が、早まるかも知れませんし」


野狐やこはそう言って裏手へと駆けて行き、


残ったのは俺と裕子さん、そして……


「あり? もしかしてカップルになっていないのって僕だけ?」


倉ぼっこがポツンと1人たたずむ。


「いや、詩音だって1人だろう」


「理奈ちゃん、会社で誰か気になる人とかいないの?」


そもそも出会いを求めるために都会に出たはずなのだが、

彼女はう~ん、と考え込み、


「ていうか、詩音とはダメなのか? アレでも男だぞ」


俺が異性ならばとそっちを推してみると、


「でもしーちゃん美人じゃない?

 イケメンとはちょっと違うんだよねー。


 それで男なのに僕より美人っていうのはちょっと女としてさー」


「まあ何となくわかるわね」


理奈の言葉に裕子さんが同調し、


「あ! だったら僕もミツの相手にしてよ!

 あやかしでも優しくしてくれるし」


え、それはちょっとと思っていると、


「理奈ちゃんなら別にいいと思うんだけど」


裕子さんがまさかの同意を示し俺は面食らうが、彼女は続けて、


「でもそれだと、詩音さんまで『じゃあアタシも』と言いかねないのよね。

 もともとあの子、満浩みつひろさん狙っていたでしょ?」


「あーそっかー。

 いくらミツでも3人相手は厳しそうだね」


今のところ俺がアウトオブ蚊帳の状態で話は進んでいき、

どうしたものかと口を挟もうとするも、下手な事を言うと泥沼に

なりそうなので口は出せず……


「まーちょっと疲れたし、僕は二階で寝てるよ」


「そ、そうか?」


やっと俺が言葉を発すると、理奈は意地悪そうに笑い、


「だってさ、琉絆空るきあさんと主様、

 銀と加奈ちゃん―――

 カップルはもうそれぞれ2人きりの場所に行ってるじゃん。


 邪魔をするほど野暮じゃないって。

 ゆーちゃんもごゆっくりー」


そう言って彼女は二階へと上がっていき、ふと裕子さんを見ると

顔を赤らめ……

俺もバツが悪そうに視線を落とした。


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