第143話・初顔合わせ06


「ではお世話になりました」


琉絆空るきあと加奈の事、よろしくお願いします」


弥月みつきさんのご両親が別れの挨拶で頭を下げる。


一応、妖力ようりょく封じの腕輪を琉絆空さんが持つ、という条件付きで、

舞桜まおさんとの仲は認められ、


また加奈さんは上司を協力者として引き入れた事、その上司である裕子さんは

俺の恋人という事で、


兄妹そろってここで滞在する事に目くじらを立てる事は無く―――

いったん両親だけ東京へ戻る事になった。


「まあ自分たちも、月曜には帰るから」


「会社もあるからねー」


「迷惑をかけないようにね」


そんな会話を家族で交わし、


「……琉絆空、言っておく事がある」


レンタカーに乗り込む直前で武人のような父親が振り向き、


「お父さんはお前があやかしと付き合う事に反対はしない。

 好きな者同士でくっつくのが一番だからな」


「親父……」


父親と息子が向かい合う。


「だがな、琉絆空。

 人と妖は異なる存在だ。


 いくら外見が幼くなろうと若かろうと、それは人間の寿命を超えた

 存在である、という事を嫌でも認識せねばならん」


「……ああ」


それを聞いていた舞桜さんは無言で―――

俺や裕子さん、そして人外組である理奈、銀、詩音も黙り込み……


「それを忘れるなよ。


 合法ロリこそが至高しこうであり、もともと長寿の妖など

 反則もいいところ……!


 つまり母さんこそが最高にして最強だという事を……!!」


「ちょっと黙って」


「ちょっと静かにして」


息子と娘はそのまま車の中に父親を押し込むとそのまま発進させて、

また主様を始めとした人外組も、『こんな時どんな顔をしたらいいのか

わからないの』という表情でそれを見送った。


そして車が完全に見えなくなると、裕子さんがぼそっと、


「反則というのなら、あのお母さんの霊力れいりょくとか神通力じんずうりきによる

 若さは反則にはならないのかしら」


「言えてるー」


その言葉に理奈が返し、


「加奈さん、きたえたらああなりそうですか?」


「どうでしょう、あそこまでいくと若返りみたいなものですし」


「同じ血筋だし、期待は出来るのではないか?」


次いで詩音、加奈さん、舞桜さんが女性陣同士で話し始め、

俺や銀、琉絆空さんはその会話に入れず、しばらくそれを見守っていた。


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