第225話・追加情報


「もしもし……あ、弥月みつきさんですか?」


倉ぼっこの理奈が特別第六課の捜査に協力した後―――

いったん東北の家に戻った俺の元に、琉絆空るきあさんから連絡が入った。


『はい。弥月家こちらの機関で新たに得た情報ですが、


 例の5人の妖の組織……1人をリーダーとして他の4人は表向き、

 仕出し弁当屋の従業員として登録していると見ていたのですが』


「違ったんですか?」


俺が聞き返すと、


『いえ、合ってはいます。

 ただ4人とも、そこの従業員であると同時に別の仕事も兼ねていまして。


 解体の自営業から占い師、スポーツインストラクターなどを兼業として

 やっていたようです。


 まあ今時珍しくは無い働き方なんですが』


確かに兼業・副業は特に異常というほどのものではない。

しかし―――


「儲かっているんですかね、それ」


『それなんですよね。

 ほとんど開店休業状態で、まともに稼働しているのはリーダーがやっている

 仕出し弁当屋くらいらしいんですよ。


 まあどちらも税金が普通に支払われている以上、こちらから攻めるのも

 厳しそうではあるんですが。


 ただ―――』


そこで琉絆空さんはいったん間を置いて、


『社会的信用を得るために、表の仕事を持つ……

 というのもあり得ますのでね。


 かく言う自分も、中堅どころの会社に籍を置いていますし』


あー、そういえば妹の加奈さんも裕子と同じ会社に勤めていたな。

そして『本業』は裏でやっていた。


『ですので、各個撃破を念頭に今計画を立てています。


 まあそれで情報共有をと―――』


「あ、いやそれはちょっとマズいかも」


と、そこで俺は思わず口を挟んでしまい、


『何かマズい事でもありますか?』


「いえ、専門家でも無いので……ただ個人的に思っただけですから」


『ですが、あやかしと暮らしてきた期間はこちらより安武やすべさんの方が長いです。


 何でもいいですので、どうか』


そう食いつかれ、悩んだ末に俺は口を開き、


「各個撃破は確かに戦術の基本なんですけど、相手は人間ベースです。

 それに個々の職業もある。


 1人1人撃破する過程で警戒の度合いもアップするでしょうし、

 散って逃げられる可能性もあるのでは、と」


『……なるほど。

 こちらは組織と見ていますが、単に人間の集団とすればそれは

 あり得ますね。


 一網打尽いちもうだじんの機会を練った方が確かにいいかも知れません。

 ご指摘、感謝します』


その後、いくつかのやり取りを経て、俺はスマホでの通話を終えた。


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