第205話・弥月琉絆空視点07


嵐のように母親が去った後―――

自分は未だに特別第六課で待機していた。


再調査したい現場は燃えてしまったものの、その現場検証の報告書が

間もなく届くという事で、


母からの意見も踏まえて、第六課の職員たちと改めて話し合う事に

したのだ。


「待っているだけ、というのもヒマだな……

 ちょっといいか?」


「は、はい。何でしょうか」


すっかり上司枠として定着してしまったのか、自分に対して彼らは

及び腰の対応をする。


「あのさ、自分はあくまでも協力者だよ。

 正規の組織はそちらなんだから、もっとフランクに対応して欲しい」


「は、はい―――いや、ああ。

 それで何……だ?」


何とか言葉を直しつつ、自分に聞き返してくる。


実際、こうなったのも少しは自分に責任があるだろう。


あやかしの訓練で、ちょっと厳しくやり過ぎたからな……

と心の中で反省し、


「もし、この火事が妖でも何でも無いとして―――

 考えられる原因は?」


自分の問いに彼は少し考え込み、


「前も言ったけどよくあるのは、ホームレスが寒くて暖を取る場合かな。

 ただ今はそこまで寒い時期じゃないし、燃やすまではしないと思う。


 後は心霊スポットに肝試しで侵入した若者による失火とか」


「なるほど」


自分が素直に感心すると、彼はホッとした表情になる。


だがこういった情報は重要だ。

自分たちは対妖に特化している分、人間絡みの場合は専門外。

『もし妖でなかったら?』という部分はどうしても弱くなる。


戦闘なら負けないだろうが―――と思っていると、


「現場検証の結果が出ました。

 これがその報告書です」


そこへ別の女性職員が書面を持ってやって来た。

自分たちはそれを広げ、各自目で追い……


その内容が判明するにつれて、表情が険しくなっていった。


「―――まるで火元が移動しているような状態、というのは?」


「わかりません。こんな表現は初めて見ました」


敬語に戻った彼と自分は顔を見合わせ、他の職員たちも頭を抱えた。


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