第131話・弥月家にて02


「あ、お兄ちゃん醤油取ってー」


「ほら」


妹と兄が両親と食卓を囲んで一緒に食事を取る。


どこにでもある普通の光景―――

あやかしを狩る一族でなければ、だが。


琉絆空るきあ加奈かなも、仕事は順調か?」


アラフィフの、時代劇に出てきそうな風貌ふうぼうの父親が息子と娘に問うと、


「それって、どっち?」


子供のうち兄が、『表の方』の仕事か『裏の方』の事か聞き返す。


「決まっているだろう、一族の方の仕事だ」


父親がそう言うと、


「んー、ぼちぼちってところじゃない?

 まあそうそうあるものじゃないし。


 私は同じ職場の上司の人が協力者となったし……

 最近はそんなところかなー」


妹が父親の言葉に対し答える。


「琉絆空の方は?」


母親―――こちらは若作りというには異常なほど幼く見える女性が

息子に問いただすと、


「地方に出た先でイタチに出会ったくらいかな?


 殺すほどの事じゃないと思って見逃したけどさ」

(■3章90話 弥月琉絆空視点02参照)


「お前も甘くなったモンだな」


「いちいち相手にしてねぇだけだよ。

 やばいヤツだったら見逃さないって」


厳しい父親の言葉に彼は反発する。


「お父さん、今はそう何でもかんでも始末する時代じゃないでしょう。

 下手な事をしたら動物愛護法とかに引っ掛かっちゃうのよ?」


「む……」


妻からたしなめられ、夫は口ごもる。


「そーそー。今はそういうのも面倒くさいんだよー、お父さん」


「妖怪です妖ですって言っても、そこらのお巡りさんが信じて

 くれねーもん」


娘と息子にも追撃され、父親は不満そうに大きく息を吐く。


「あ、そうそう。そういえば琉絆空に加奈」


そこで何かを思い出したかのように母親が兄妹に話しかけ、


「ん? 何だ?」


「何? お母さん」


聞き返す2人に母親はお茶を口にし、それを見て琉絆空も加奈も

お茶を手に取るが、


「あなたたちの相手って妖なの?」


その言葉に、兄妹揃って口の中の液体を吹き出した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る