第237話・対面04


「要求は―――まず最低限、ドラッグからは手を引いて欲しい。


 という事だったんだが……もう手を引くつもりだったのか」


「ああ。副作用も強いし、何より実験動物のレベルが低くてなあ。

 あれで成功すれば、信頼出来る人間を募ってやるつもりだったんだが。


 あ、ここにいる俺たちは全員、自力であやかしになったクチだ。

 ドラッグは使っていないぞ?」


琉絆空るきあと『雲外鏡うんがいきょう』―――

代表同士の話し合いは進んでいき、


「あと、連携・協力体制を取りたいという事だったか?


 確かに本来なら、俺たちの『本業』での依頼は法的に裁かれても

 おかしくない連中がターゲットだ」


「そいつらの証拠やデータを渡して欲しい。


 もし司法で裁けるのであればこちらでやる」


そこで『雲外鏡』はいったんうなずき、


「法的に裁けない連中は?


 証拠不十分、もしくは時効……

 跡を残さないように、もしくは違法スレスレで行動する、

 悪意100%のクズのような存在だ」


すると琉絆空の隣りに座っていた舞桜まおが、


「それこそ、お主らの出番であろう?

 何ならアタイも参加してよいぞ♪」


「彼らが証拠も何もない、合法だ、というのなら―――

 オラたちだって『合法』だべ」


そして銀が続く。


「そうだな。俺たちの当面の行動はそうしておこう。


 最終目標は裏の経済を牛耳る事だが……

 政治家の醜聞しゅうぶんとかあったらよろしく」


「ま、一応伝えておこう」


そこで別テーブルで話を聞いていた、『飛縁魔ひのえんま』・『雪女』が立ち上がり、


「話終わったー?」


「何か今まで通り、やる事変わらないっぽいけど」


烏天狗からすてんぐ』・『煙羅煙羅えんらえんら』も席から腰を上げ、


「ちゃんと話を聞いておけよ。

 裁けるヤツだったら証拠とかを引き渡すって話だろう」


「それより―――

 いざという時、鬼を始めとしたこれだけ妖力ようりょくが高い連中の協力を、

 得られるというのはありがたい」


と、女性陣とは対照的に男性陣は合意を前向きに受け止める。


「じゃ、アタシたちもこれで……」


と、詩音とミツヤも帰り支度を始めると、


「あのお店は続けるのよね!?」


「お客さんとして今後も通うからー!!」


『飛縁魔』と『雪女』が熱烈な挨拶をし、


「じゃあ、お邪魔しました」


「帰りましょう、兄さん」


と、琉絆空には舞桜が両腕を回し、加奈は銀の隣りに寄り添う。


それを見た『雲外鏡』は冷やかすように、


「仲が良いな」


「そりゃ恋人同士だしのう。何か文句あるかの?」


舞桜が反応して返す。


「おーおー、お熱いこって」


「まあ、私たちは『雲外鏡』様がいるからいいですけど。

 ていうか『烏天狗』と『煙羅煙羅』も誰か見つけなさいよ。


 そこにいる詩音ちゃんやミツヤ君とかどう?」


『飛縁魔』と『雪女』がからかうように話す。


「いやあっちは男だろ!?」


「あーでも、確かにこの2人よりは」


その言葉で室内に炎と吹雪が同時発生し―――


『どうしました弥月さん!?

 交渉決裂ですか!?』


外にいた特別第六課の職員が異変を感じ、無線を入れてくる。


「いや大丈夫。話はまとまったからこれから帰る。

 今やっているのは仲間割れというかじゃれ合いというか」


『ハ……!?』


こうして、人間ベースの妖の組織との話し合いは終わり―――

人間・人外混成組はマンションを後にした。


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