第236話・対面03


「ドラッグ、か……


 実際、あれは失敗作もいいところでね。

 こちらとしても手を引くところだった」


細面の青年、『雲外鏡うんがいきょう』が―――

琉絆空るきあを前に語る。


「どうやって作った?」


「覚えたのを応用したのさ。俺の『雲外鏡』の能力は、一度見たものを

 頭の中に録画・その映像をプロジェクターのように投影出来る。


 そしてどうやら……いったん見たものは俺の肉体で可能な範囲なら、

 再現も出来るらしい。


 それで薬理学を本やネットでちょっと学んでね。

 それと俺の妖力ようりょくも使っている」


その答えに、鬼の舞桜まおは恋人の横で片足を組む。


「えげつない能力じゃな。

 じゃあ、アタイの怪力もコピー出来るのか?」


すると『雲外鏡』は降参するように両手を挙げ、


「肉体の可能な範囲でなら―――

 ちなみにどんな事が出来る?」


その質問には川童かわこの銀が先に口を開き、


「ブルドーザーやショベルカーを引き裂くくらいだべか」


「出来るかそんなモン!!」


細面の青年は即答で返す。


「あの~……

 それで他の方々、『飛縁魔ひのえんま』さんや『雪女』さん、

 『烏天狗からすてんぐ』さん、『煙羅煙羅えんらえんら』さんは

 話し合いに参加しなくていいんですか?」


琉絆空の妹であるポニーテールの女性、加奈の視線の先には、

別テーブルに移動して、


「あーいいのいいの。リーダーの『雲外鏡』様にめんどーな事は

 全部任せてあるから。


 とゆーわけで詩音ちゃーん、こっちもう1杯!」


「あ~……男の娘の酌でするお酒はたまらんねぇ」


眼鏡をかけた秘書風の女性と、ボーイッシュなショートカットの

『飛縁魔』『雪女』は、詩音とミツヤの接待ですっかり出来上がっており、


「いや、少しは聞いておけよ……」


「確かに僕たちも、リーダーの言う事には従うけどさ」


ボサボサの短髪をした『烏天狗』、そして気弱そうな『煙羅煙羅』は

彼女たちをたしなめる。


「しかし、警察関係者と聞いたが―――

 それならなぜ直接警察が来ない?」


『雲外鏡』の問いに琉絆空は苦笑し、


「どうやってだ?


 体を煙に変えた罪でか?

 それとも自由自在に炎を発する罪で?


 君たちはこの上無く法律に引っ掛からない……

 すなわち合法な存在だよ」


「そうだな。じゃあ結論から聞こう。


 我々をどうしたいんだ?」


人外リーダーの青年の言葉に、弥月家の長男は姿勢を正し前のめりに

なるように、彼を見つめた。


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