第177話・妖怪(人間ベース)の組織03


「それで今後の方針だが―――


 さすがに国家の方でも対応してくる可能性が高い。

 なので例の薬は、よほど信用した者にしか渡さないように」


「まあデータはある程度取れましたしね」


「それに私たちのようにいったん『覚醒』すれば……

 もう必要は無くなりますから」


眼鏡をかけた秘書風の女性が自分の手元を見つめる。


飛縁魔ひのえんま、か。

 まあ君らしいと言えば君らしいが」


「どーゆー意味よ?」


言われた女性はジト目で言った相手をにらみつけるが、


「同じあやかし同士、仲間割れは止しましょうよ」


「それより、何か『協力』が必要な方はいますか?」


そこで話の方向が変わり、周囲をそれぞれが見渡す。


「じゃあ、『烏天狗からすてんぐ』さんにお願いしたい事があるんだけど、

 俺の会社が今、ちょっとした嫌がらせを受けていてな。


 会社の駐車場に隣りの建設会社が、勝手に資材を置いていくんだ。

 邪魔で仕方なくてさ」


「それなら羽団扇はうちわで吹き飛ばせばいいか。

 人か? 資材か? 車か? それとも会社ごと?」


それを聞いた男性は顔の前で手を垂直に立てて振り、


「出来れば人死には出ない方向で。いろいろ面倒な事になるし」


「あなたじゃどうにか出来ないの?」


女性の1人が話に割って入るが、


「俺は『煙羅煙羅えんらえんら』だからなあ。

 侵入とかには向いているが、物理的にどうこうは出来ないんだ」


「あー、なるほどね」


そこで話はいったん元に戻り、『烏天狗』と呼ばれた青年が、


「じゃあいつにする?」


「出来れば早いうちにお願いしたい。敷地内から追い出せばそれでいいから。


 ったく、こういうのが一番うっとうしいんだよなあ。

 直接敵対してくれりゃ、まだ容赦なくやれるものを」


「じゃ、明日にでもやるか。

 お望みならその建設会社の敷地内にでも放り込んでおくが?」


「あ、じゃあそれでお願い」


元人間の人外同士の会話はそこで終わり……

それを最後に5人は解散した。


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