第167話・人間ベース05


「マジかそれ、親父」


「シャレになってないよー、お母さん」


週明け―――

東京の弥月みつき家に帰って来た琉絆空るきあ加奈かなは、

人間ベースのあやかしが主体となる組織について、両親から話を聞かされていた。


「そうは言ってもな。これは事実だ」


「警察もわざわざからかうために呼ぶわけもないでしょうし……

 それに長年、敵対とまでは言わなくても、それこそ『怪しげ』な

 団体として接してきた弥月一族ウチに協力要請するという事は、

 かなりの問題と見ていいわ」


武人のような父と、少女のような母に言われて2人はうなずく。


「お母さんはどうする気?」


「もう本家に話は行っていると思うから。

 あと、ウチ直属の研究機関でも何かつかんでいないか確認中よ」


息子の質問に母親が答え、


「それでお父さん、受けるの?」


「協力はしなければならんだろうな。

 母さんの実家次第だが」


続けての娘の問いには父親が対応する。


「まあ妙な人をつけなければ、協力くらいはすると思います。


 問題は―――

 妖が仲間を増やそうとした事なんて、今まであったかどうか」


ドラッグ・薬による妖怪化……

それは取りも直さず、意図的に人間を妖怪として増加させよう、

という事に外ならず―――


これまでのように単体もしくは、群れでも野狐のように1種類のみ、

という相手ではなくなった事を意味していた。


「こうなると隠橘おきつさんを味方に引き入れておいたのは大きいな。

 反対する声など出るまい」


夫の話に、妻はふと思い出したかのように、


「そういえば座敷童と川童かわこと、野狐やこの子もいたわよね?

 この際だから、彼らも一族ウチに紹介しちゃいましょうか」


降って湧いたチャンスにポニーテールの妹が飛びつき、


「それな! じゃあさっそく銀……じゃなかった、校倉あぜくらさんと

 推古すいこさん、それに和泉いずみさんと連絡取るわね!」


と、話が進んで行き―――

鬼娘と人外3人組は、弥月一族本家と初顔合わせする運びとなった。


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