第166話・人間ベース04


「人間が元となったあやかしだけで、構成されている組織……」


「当然それは犯罪組織、という事よねえ」


弥月みつき夫妻が、警視庁の部長を前に両目を閉じる。


「確かに人間ベースの妖は知能が高く、人間社会にも精通している。

 だが珍しい存在というわけでもない。


 そもそもそういう連中は我が強く、下っ端を作っても群れるという

 概念は無かったはず」


「夫の言う通りですわ。


 むしろ人間ベース同士であれば、敵対するのが常―――

 スーパーマンは自分以外いらないし、むしろ脅威と見るのが

 当たり前でしたから」


そこで部長クラスの男は一息ついて、


「ですが、これは確実な情報なのです。


 組織の中に上下関係は認められますが、その中に普通の人間、

 もしくは非人外はおりません。末端までいくとわかりませんが」


彼の説明に夫妻は身を乗り出して、


「妖の組織……それだけでも厄介な事ではあるが」


「ですが、どうしてそんなに増えたのです?

 ここ数年のお話ではないでしょうが、妖が急に増えたなんて

 聞いた事も」


武人のような夫と幼い巫女のような少女の外見の妻に、

部長は額の汗をぬぐいながら、


「ドラッグ……薬によるものと見ています」


その話に夫婦して顔を見合わせる。


おっしゃりたい事はわかります。


 こちらも、ドラッグの調査過程で知ったのです。

 一時的にプロレスラーや、異形の能力を身に付ける事の出来る薬が

 出回っているとの事で」


そこで夫の方が乗り出してた身を元に戻し、


「薬で妖怪化とはな。

 遺伝子レベルから変えられたとか?」


「そこはまだ分析が済んでおりませんのでまだ……


 ただ話によると、先ほどお話しした通り、一時的に超常現象的な能力が

 身に着くという事でしたが、


 どうも常飲じょういんしていた連中の中に、元に戻らなくなった者が出てきたらしく」


そこで妻の方も出された飲み物に口をつけながら、


「……詳しくお聞かせ願えるかしら?」


そこで弥月夫妻は、詳細な情報を持ち帰る事にした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る