第28話・遠方より人来たる・06・武田視点03

「ふー……」


8畳はあろうかという、広い寝室に仰向けになって天井を見る。

初めて寝る場所だからか寝付けない。




目白家1F


         ◇トイレ

    裏口■──|

     風呂◇─◇台所

         |

       居間□  大広間

         |  □□□ 居間←【仕事部屋】

    縁側■──□□─□□□─□─■縁側

       広間□□ □□□ |

         |   |  □寝室

階段(2Fへ)◆─■玄関 □居間

             |

             ■縁側




目白家2F


       ◇トイレ

       |

      長|─□居間←【裕子寝室】

      廊| |

      下| □□

       |─□□広間

       |

       ◆階段(1Fへ)




安武やすべさんと同じ屋根の下で―――

というだけでも落ち着かないのだけれど。


でも覚悟も気合いも準備万端!

いつそうなってもいいように、荷物の中には勝負下着にいろいろと……!


「田舎の一軒家に若い男女。何も起こらないはずもなく―――

 あぁ安武さん、私はいつでも受け入れオッケーですわぁ……♪」


そう見悶みもだえる私の部屋に、私以外の声が聞こえて来た。


「甘いねー」


「ええ、まったく困ったものです」


「ミツは多分絶対ここには来ないっぺよ」


思わず振り返るとそこにはあの人外3人組、倉ぼっこに野狐やこ

川童かわこがいた。


「いいい、いつからそこに」


うろたえながらも私は必死に取りつくろい、たたずまいを直す。


「まあまあ。そんな事より―――武田さんはミツにホの字なんだよね?」


肩まで髪を伸ばした、男の子にも見える女の子の妖怪にストレートに言われて

私は顔を赤らめる。


「でもこのままじゃ、夜が明けるだけだと思いますよ?」


「積極的に自分からグイグイいくタイプじゃないべよ、ミツは」


続けて、オカッパ頭のどう見ても女の子にしか見えない少年の妖怪・野狐と、

日焼けしたわんぱく少年のような川童がため息交じりに話す。


「お、落ち着きがあるんですよ! 彼には―――」


私はちょっとムッとなり言い返す。


「わー、恋する乙女全開ー」


「それで? ずーっと彼の方から来てくれるまで待っているんですか?」


「やっぱりわかってなかったっぺよぉ、このお嬢ちゃんは」


外見は自分よりずっと年下の子供たちに言われ、カチンとくる。


「いったい、あなたたちは何を言って―――」


「武田さん……何で僕たちがここにいるのかわかる?」


「いやあなたたちが勝手に来て」


倉ぼっこに受け答えしていると、野狐が両目を閉じて、


「ね、武田さんは何をしようとしているの?」


「えっ? だ、だから……安武さんと付き合えたらいいな? って」


そこへ川童が順番のように入って来て、


「なるほどなるほど。

 つまりアナタはミツと恋愛関係になりたいという事だべな?


 それで今武田さんは何をしているんだべ?」


「だ、だから―――いろいろと、その、準備をして?

 いつでも受け入れられるように?」


私の言葉を聞いていた倉ぼっこと野狐は露骨にため息をつき、


「じゃあ、何でここにいるの?」


「ミツ様は一階におられます。二階ではありませんよ?」


そそ、それは逆に私から突撃せよと? そう思い戸惑っていると、


「武田さん。これはチャンスなんだっぺよ。


 チャンスをチャンスと見ない人間は失敗はしないかも知れないべが、

 成功もしないんだっぺ」


「そうです。そしてここにアタシたちが―――何より、倉ぼっこさんが

 いる意味……それを考えるのです」


川童と野狐の言葉に倉ぼっこの方を見ると、彼女はドヤ顔をしながら

自信満々に立っていた。

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