第114話・ぼんきゅっぼん


「ええと……」


ぬし様、でしょうか?」


俺と裕子さんはその姿を見て思わず確認のための質問をする。


翌日、お昼近くになってようやく弥月みつきさんのお兄さんと、主様が

戻って来たが―――


10才くらいだった鬼っ子の姿は、すっかり大人の女性のそれとなり、

身長は一緒にいる男性とほとんど変わらず、彼の妹とほぼ同じ年齢に見えた。


そして何より、巨乳モデルというべきようなプロポーションとなっていて、


「うっわー、何これおっぱいこの野郎」


「だ、誰よりも成長なされましたべ、主様……」


加奈さんと銀が目を丸くしながら語る。


「いやいやいやっ!?

 いくら何でも成長し過ぎではっ!?」


「そ、それで琉絆空るきあ様は―――

 主様に名付けをしたんですよね?」


理奈と詩音も、その変わりように目を見張る。


「あ、ああ。

 舞桜まおという名前にした。

 桜が舞う、というイメージで……


 あまり和風から離れるのもどうかと思ったから」


「そうじゃ!

 これからアタイの事は舞桜と呼ぶがいい!」


主様がそのすっかり大きくなった胸を張って、自慢気な顔になる。


「いやでもさ、兄貴―――

 結局、タイプはそっちだったって事?


 それなら別に悩む必要も無かったんじゃ」


加奈さんがそこにツッコミを入れる。

確かに、あれだけ大騒ぎしたのは何だったのかと言いたくもなるが、


「い、いやそれがな……」


そこでチラ、と琉絆空さんがすっかり彼女の顔になった主様に

視線を送ると、


「そこはまあ、殿方とのがたの前でする話ではない。

 のう? 旦那様」


鬼っ子は胸を押し付けるようにして、彼氏の片腕にしがみつくように

腕を回す。


そして主様が旦那様とまで言うって事は―――

完全にカップル、相思相愛になったという事だろう。


「で、でも主様……

 いったいどれだけパワーアップされたので?」


理奈が恐る恐るたずねる。

以前の力で車のドアを引き千切るくらいは出来たし、いったい

どれだけ強くなったのやら。


「まあそのへんは女同士で話そうぞ。

 殿方は殿方で待っておれ」


そう舞桜様が言うと、取り決めでもあったかのように女性陣は

二階へと上がっていき、


「えっと―――

 じゃあお兄さんと銀さんは、こちらでお茶でも」


「あ、ああ」


「そうするべ」


残された男性陣は、一階の居間へと場所を移した。


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