第113話・女子会・詩音視点01


そして小一時間ほど議論は続けられたが、これといった結論は出ず……

小休憩しようという事で、お茶とお菓子が出された。


「あーもう、いっそあのバカ兄貴をトレーラーハウスに監禁すれば

 解決するような気がしてきた」


加奈さんがなかなかにぶっそうな案を出す。

でも独占欲が強いのは、女性として当然の感情だろう。


アタシは男としての体があるけど、そういうところは

わかってしまうというか―――


「ですが、最終的に琉絆空るきあ様が……

 名付けを思いとどまるという事もありますよね?」


アタシの方から楽観的な希望論を話してみると、


「どうでしょうか。

 何より、ぬし様が強く希望していましたし」


「それに兄貴はどんな姿になっても、とまで言ってたから―――

 ほぼ名前は付けられると思っていた方がいいと思いますよ」


裕子様と加奈さん、人間側の二名がやや否定的な答えを返し、


「どちらかと言うとそっちの方がややこしそう。


 主様も、愛する男が自分のために我慢して、とか……

 そういうのは気にするだろーし」


続けて理奈さんが、そうなった時の問題点を告げる。


「それに兄貴、何だかんだ言って甘いんですよ。

 口ではああ言っているけど、弥月みつき一族の中では結構あやかしを逃す方なので」


「う~ん……

 そんな人が、自分がれた女性のお願いを断れるかしら」


そこでおせんべいをかみ砕いていた理奈さんが、


「無理じゃね?」


「だよねー」「デスヨネー」


身もフタも無い同じ人外の言葉に、人間側の二名も同意し―――

アタシも困ったように微笑んでそれに加わる。


「だとすると今後は主様に名前が付いたという前提で、

 それを全力でサポートする、くらいでしょうか」


アタシの言葉に女性三人はうなずき、


「じゃあ、私はそろそろ……」


「あ、私も銀様のところへ行かないと」


夜も更けたところで、パートナーがいる裕子様と加奈さんはそれぞれ

行くべき場所へと向かい、


そして翌日の結果を待つ事になった。


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