第63話・最終試験後・03
「うおっ、重いぞ!?」
「おい、落とすなよ!」
いきなり車の上に出現した木製の箱を、連中は慎重に地面に降ろす。
「何だこりゃあ? 中身は何が……」
全員が見守る中、1人が箱のフタを開けると中には
金属の板が6・7枚ほど入っていて、
「……小判、か?」
「い、いえ社長! こりゃ
俺、実家が
さらに1人がそう言いながら、鑑定でもするかのように1枚1枚それを
手に取り、
「本物です、しゃ、社長!」
「値段はどれくらいなんだ?
あのトレーラーハウス、一千万円以上したんだが」
そういえば値段はそれなりにしたと言っていたな。
家具や内装費とかもかかっていると思うから、ちゃんとその辺りは
しっかり金をかけたようだ。
「ちょ、ちょっとお待ちください!
ええと今の時価で、この時代の大判は―――」
彼はスマホを操作しながら必死に情報を検索し、そしてゴクリと
喉を鳴らす。
「た、多分、ですが……
この1枚だけで、トレーラーハウスを買ってお釣りが来ますぜ」
今度は俺が目を丸くしてしまう。
たった1枚で、一千万円以上!?
それも何枚かあるわけだから―――
総額となると億近く……?
俺はいつの間にか隣りに戻ってきた鬼っ子に小声で、
「(あれ、いったい何なんだ?)」
「(何百年か前に、戦に敗れたっぽい武者どもが山に隠していったものじゃ。
まあもう生きてはおらぬじゃろうし、ずっと放置だったのでな。
その一部だけを持ってきてやった)」
文字通りの『お宝』を前に、『島村建設』の連中はざわめくが、
「しかしどうしたものかな。
こういう美術品や
売るにしても、どうやってさばいたものか」
社長が両腕を組んで悩み始めるが、
「そういうのって、盗品かどうかのチェックが厳しいだけでしょう?
堂々と売ればいいじゃない。
どこからも盗まれた記録は無いでしょうし、書類上この土地は
あなたたちの所有って事になっているんだから。
そこで発見したって言えば。
何も問題は無いんじゃないの?」
裕子さんがそう言うと、
「まあ……それもそうだな。
だがいいのかよ?
迷惑をかけた上に、詫びに用意したモン以上の物をもらっても」
「
断るのも自由だが、それこそ怒らせるかも知れねぇぞ?」
すると社長以下、『島村建設』の連中は全員肩をビクッと震わせ、
「そいつぁカンベンだな。
有難く頂戴するぜ。
他に何かあるかい? 主様とやらからは」
社長の言葉に、俺は鬼っ子と小声で意思疎通して―――
・もうこの山に手を出さない事。
・今後、1年に1度山に酒や
・トレーラーハウスの管理は、俺に一任する事。
などをその場で通達し、今度こそ全員で山を下っていった。
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