第189話・現状把握


「まいったな」


「まいりましたね」


弥月みつき家の両親は帰りの車の中、運転席と助手席で語り合う。


「例の組織? 人間ベースがメインのあやかしで構成されているヤツ」


「急に動きが見えなくなったとか言っていたけど……

 まあ100%相手にバレたって事だよね」


琉絆空るきあと加奈、息子と娘もその会話に参加する。


手合わせの後、どれくらい相手の情報を知っているかすり合わせを

行ったのだが、


特別第六課が弥月家に連絡を取り出したのを境に、今はまったく情報が

入らなくなってしまったのだという。


「せめて妖の名前だけでも入手してくれれば助かったのだが」


「出来たばかりの組織だし、アテにしていないわ。

 弥月家の調査機関からの情報を待ちましょう」


武人のような外見の夫に、10代前半の少女のような妻が答える。


「お母さん、こっちでは何かつかんでないのか?」


中肉中背の、いかにも普通の青年と言った外見の息子が問う。


「……今のところ、メインにいるのは5人。

 わかっているのはこれくらいね。


 警察は『組織』と見ているみたいだけど、決まった手下がいないみたい。

 多分次から次へと使う『駒』を変えてる。


 例のドラッグを使用したのも、仲間というより新たな手駒調達のためと

 見ているわ」


「うぇえ~、何なのそいつら。

 だから人間ベースの妖って厄介なのよね―――」


母親の言葉にうんざりした様子でポニーテールの娘が返す。


「だが、人間なら人間で予想がつく事もある。


 しばらくは調査機関に頑張ってもらうしか無いが……」


父親が娘の言う事を擁護するように話すと、


「あ、お父さん。

 家に帰る前にちょっといつも行っているスーパーに寄ってもらえる?


 確かお肉の特売日だったから」


「ん、わかった。

 じゃあ今日の夕食は……」


そこで加奈が大きな声で、


「豚なら生姜焼き、牛なら牛丼にしてー!」


「あら残念。特売しているのは鶏肉みたいよ」


「あ、じゃあ自分はチキンカツがいいなー」


そんな事を話しながら、車はスーパーへ向かって速度を上げた。


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