第190話・その後出社してみて


「頂きます」


「「「頂きまーす」」」


月曜日の夜・裕子さんの自宅マンション―――

そこで俺は彼女と理奈、詩音と一緒に夕食を食べ始めた。


「う~ん」


「?? どうしたんですか、満浩みつひろさん」


裕子さんが俺の顔を見ながら心配そうに聞いてくる。


「いや、会社の女性陣の顔をまともに見れなくてさ……


 俺が裕子さんと付き合っている事は、女子社員はみんな知っているんだよね?

 それで理奈とも付き合い始めちゃったから、どんな目で見られているのか」


確か以前、社内恋愛はバレていて当然、特に女性陣には……と聞かされた。

となると俺が倉ぼっこの理奈とも、つまり二股かけているのを知られて

いたとしたら、どういう評価になるやら―――と気が気ではなかった。


「まあそこは、あまり気にしない方がいいんじゃないかなー」


腰まで髪を伸ばした童顔の女性が、のんきに答える。


「でもさ、社会的信用というか……こう、噂とかになると」


「そういう噂となると、私や理奈さんにも迷惑が及ぶわけですから。

 うかつな事は言えないんじゃないかと」


眼鏡をかけたセミロングの、いかにもなキャリアウーマンふうの彼女が

指摘する。


確かに彼女は上司だし、変な噂をしてにらまれるような事は避けるかも

知れない。


「あと多分、現実感が無いんじゃないでしょうか。


 ミツ様は人間のモラルを守らないような人にはとても見えませんし、

 もしバレたとしましても、話半分にしか他の人は聞かないでしょう」


シルバーの長髪をなびかせた詩音が、冷静に分析して返す。


そう言われてみれば今までの信用もある事だし、プライベートとはいえ

二股をかけるような男とは見られないか。


「そだねー。ミツって人畜無害そうなオッサンだし、まさか女性2人を

 相手にしているとは誰も思わないよー」


「シンプルにわかりやすいけど言い方ァ!!」


理奈の言葉を聞いて裕子さんも詩音も苦笑し、裕子さんの家での夜は

けていった。


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