第191話・亮一視点03


「……ああクソッ、どうして俺ばかりこんな目に」


身長180cm超の長身に金髪の、いかにもなチンピラ風の男が悪態を

つきつつ街中を歩く。


そのアラフォーの男性は、満浩みつひろの兄・亮一りょういちで、

ドラッグを使用して婦女子に乱暴を働いたとして逮捕されていたが、

(■5章149話 瑠奈視点02参照)


肝心の被害者がその場から逃げ去っており、被害届も出ていない事。

またドラッグの入手先については全くわかっておらず、ある意味被害者とも

言える事。


そのドラッグでの犯罪行為は心神喪失しんしんそうしつ状態にあったという事で―――

厳重注意の上、釈放されていた。


「ったくよお、こっちは巻き込まれた善良な一般人だろうに。

 そんな事より俺を騙して妙なドラッグを渡したヤツを捕まえろよ」


彼が釈放された理由は母親による度重なる懇願こんがんと、警察サイドも

コイツは小物で何の情報も得られないだろうと判断したからなのだが、

そんな事を予想出来る事もなく。


「チキショウ、うまい事言って薬を渡してきたヤツ……

 今度出会ったらタダじゃおかねえ」


あの道場の知り合いから、という話だったけど―――

『誰がてめぇみたいな疫病神にこっちから話を持っていくかよ』と、

全面否定されちまった。


一時的に身体強化が図れる、という触れ込みだったのだが……

あの女子学生たちと、妙な背の高い女に邪魔された時に飲んだ後の記憶が

あいまいなんだよな。


副作用とか後遺症は無いっぽいが、慰謝料の1つももらわなけりゃ

気が済まねえ。


薬は警察に押収されちまったし―――

俺が調べられるくらいだったら、とっくに警察が突き止めているだろう。


「……あん?」


30メートルほど離れたところで話している男2人組……

間違いない、一方は俺に薬を渡してきたヤツだ。

こんなところで出会うとは。


しかし一緒に話している20代くらいの男は誰だ?

裏社会って感じの気配はしねぇが。

それなら、俺に薬を渡したヤツの方がよっぽどアウトローっぽく見える。


「! 別れやがった」


ソイツと20代くらいの男が別々の方向へ歩き出す。

どうする? どっちかを追いかけるか、それとも―――


「あの20代くらいの男にするか。

 どう見ても裏の人間じゃ無さそうだし、脅せばいくらか払うかも知れねえ」


俺は『迷惑料』を払ってもらうため、その男の後を尾行し始めた。


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