第311話・決着04
「なるほど……
しましたか」
それから一週間ほどして、俺は例の若者―――
かつて偵察に来ていた十六夜一族の青年から連絡を受けていた。
『はい。やはり女性陣の突き上げが効いたようでして。
それにあの動画を見りゃ、こっちがマッ〇マックスよりわかりやすい
悪役でしたからね』
あの時、『月』『影』部隊と示し合わせ……
まずは両方の部隊から、襲撃は成功したとのウソの報告を長老にさせ、
そして鬼の舞桜さんは覚醒前の子供モードで、『月』部隊の捕虜として
長老の引き合わせる事にしたのである。
彼らの協力が得られない事も想定して、トランシーバーも調達したのだが、
両方とも思うところがあったのか非常に協力的だったので、報告を偽装する
手間すら
その後、正論と子供特有の泣きながらのワガママと合わせ、
『こちらは大人しく暮らしていたのに、理不尽に攻撃された』とアピール。
さらに彼ら、『月』『影』部隊が引き上げた後……
舞桜さんと長老のやり取りを録画した動画を持って、一つ目小僧の
覚醒前の詩音を、
念のため、弥月兄妹を同行させて、だ。
この世界の人間の半分は女性である。
そして人見君と詩音―――2人とも女の子と
その2人の涙ながらの訴えに、もともと無差別に
消極的だった風道・朧の一族は全面的に彼らを支持。
何せ自分の妻や娘、母親、姉妹が人見君と詩音の味方に回っているのだ。
男性陣としては無視出来ず、十六夜一族の『暴走』を問い質す事になった。
また十六夜一族の方も……
いかに武闘派が一番多い一族といえど、あの動画を見せつけられた後に
『やはり妖は滅ぼすべき』との主張を押し通す者はほとんどおらず、
結果、強硬派は立場を失い―――
さらに長老は孫娘にすら、『女の子を泣かせるじぃじ嫌い!』と
言われた事から、
幹部も含めて『妖怪絶対殺すマン』一派は、隠居もしくは要職から
遠ざけられたのであった。
『これでウチも風通しが良くなりましたよ。
これも
「いや、俺はお礼を言われるほど動いちゃいないですよ。
弥月家や他の人、妖たちの協力もあったからで……
じゃあ、俺はこれから仕事があるので―――
失礼します」
昼休み中だった俺は、スマホの通話を終えると伸びをして
次に備える。
「やれやれ、一段落したか。
他のみんなにも知らせないとな」
俺は事の顛末を伝えるために、スマホでメールを打ち始めた。
そして、そんな
「ははは、
見たであろう、面白い
10才くらいの、目鼻立ちが妙に色っぽい少年が―――
ビルの一角に腰掛け、足をぶらぶらさせながら手持ちのスマホに
話しかける。
『そうは言うがな、
俺はあの元人間という
「おお、アレか。
だがあの満浩も、人の身でありながら
誰も傷付けずに八方丸く収めたのだ。
なかなか出来る事ではないぞ。
無論、雲外鏡の協力もあろうがな」
彼、
神野と呼ぶ者に通話越しに言い返す。
『そうか、お主はその人間を支持するか』
「ほら、そうやって二者択一で考えるのが良くないのだ。
我もお前も同じ『
誰か1人しか成ってはならぬ、という決まりは無いであろうよ」
その言葉に通話先は黙り込み、
「なあ、もう良いではないか。
我らはしばらく休ませてもらおうぞ」
『それもそうか。
では、認めるとしよう。
2人とも……『魔』とする事を』
その会話を最後に通話は切れ、山本という少年は満足気な表情で空を見た。
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