第68話・弥月加奈視点01


私の名前は弥月みつき加奈かな

都内にあるアプリゲームを作る会社に勤めているグラフィッカーです。


高校卒業後、入社してまだ3年目ですが―――

上司である武田さんに見込まれ、新規プロジェクトに参加出来ました。


武田部長は私より年上の方ですが、とても面倒見が良く、

同性として尊敬出来る方です。


わたくしもチームの一員として、新規プロジェクトに貢献こうけんしていこうと

思っています。


……と、ここまでがわたくしの表の顔。


その正体は―――

物の怪もののけあやかしどもを狩る事を生業なりわいとしてきた一族、その末裔まつえい


普段は目立たないよう普通の職業に就き、一族、もしくは自分が

人外の存在に気付いた時、人知れず『狩る』。


それが弥月一族たるわたくしの使命であり宿命なのです。


とはいえ、アニメや漫画のような派手な活躍はありません。

もちろんお札や超能力っぽい力も使う事はありますが、最近はもっぱら科学や

コンピューター技術も組み合わせて対応します。


というのも、最近の人外どもも時代に合わせ……

人間の道具を使う事も珍しくなくなっているからです。


ただでさえ人には無い力を持つ妖が人間の技術を駆使した場合、

それはかなりの脅威きょういとなります。

なのでウチの一族では率先して最新技術を取り入れ、妖どもをほうむすべ

研鑽けんさんしてきました。


その中の一つに我が一族が開発した『人外探知機』なる物があり―――

半径10メートル以内に人外を感知すると報せてくれるのだけど、


何とそれが、わたくしの職場で反応してしまった。

しかも対象を狭めていくと、それはどうも武田部長らしい。


でもわたくしは彼女ともう2年くらい仕事をしているはず。

なのに何で? どうして突然? と自問自答したけど……


分析し、行きついた答えは時期。


確か新規プロジェクトを発足するにあたり、以前共同開発をした事のある

会社から、一人引っ張ってくるとは聞いていました。


『人外探知機』が反応し始めたのはその時と一致します。


そう、安武やすべとかいう人です。

いきなりプロジェクトのサブリーダーにいた人。


わたくしも彼と2・3話しはしたけど、その時はやや大人しめの、

気さくな中年男性にしか見えなかったのですが……


そしてその時も、『人外探知機』は反応していました。


でもわたくしの見立てでは、この人は人外ではありません。

一族の能力で人か妖か見極められるのだけど、もちろん武田部長も

物の怪ではありませんでした。


しかし、人を支配したり利用したりする人外もいたりします。

それかかなり近い位置にいるとしたら、『人外探知機』が反応する

場合もある……


もしそうだとしたら、わたくしはこの安武とかいう人物から武田部長を

守らなければいけません。


何が目的かわからないけど、好き勝手はさせない―――

いつかその正体を暴き、『狩る』。

わたくしはその決意を胸に秘め、本来の生業も進める事にしました。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る