第201話・あやかし(人間ベース)の活動02


「……るな」


「ん?」


しばらく男は沈黙していたが、立ち上がると、


「ふざけるな!! ガキどもに謝れだと!?

 どうせロクな人生歩めなかったに決まってんだろうが!!


 それを俺が利用価値を見出してやったんだ!


 俺は……俺は教頭になる事が決まってんだぞ!?

 そんなゴミどものために出世を諦められるかよ!!」


小太りの男は自分勝手な言い分に終始するが、女性は録画媒体を

カバンにしまって、


「それは残念ですわ。

 じゃあ、世界デビューの日をお楽しみに―――」


すると男は眼鏡の女性に覆いかぶさるように襲い掛かり、


「舐めてんじゃねぇぞ、クソアマ!!

 それならてめぇもしゃべれなくすればいいだけだ!!


 俺もてめぇを撮ってやるよぉ。

 1人で来たのが間違いだったな……って」


眼鏡の女性は仰向けに倒れながら、上の男に抱き着くように両手両足を回す。


「な、何だよオイ。もしかして俺が目当てだったのか?

 最初からそう言えばいいのによ」


「ええ。でも私、熱いのが好きなの♪

 どれだけ熱くなっても……イイ?」


「へへ……そういう事かよ。


 いいぜ、いくらでも熱く―――」


すると彼女の全身が文字通り燃え上がり始め、


「あぁっ!? 熱っ! あちぃよお!!」


「あらぁ♪

 いくらでも熱くなってもいいって仰ったじゃないですかぁ、センセ♪」


「はなっ!! 放せっ!! 放してくれえぇえええっ!!」


男は懇願こんがんするが、その言葉が聞き入れられる事はなく……

ただ叫び声だけが路地裏に響いた。




「……ふぅ。さて、と」


眼鏡の女性は立ち上がると、ところどころ服が焼けただれた男を見下ろし、


「安心して。死にはしないから。

 でも顔とアソコはもう元に戻らないでしょうね。


 今まで散々貴方が踏みにじってきた生徒たちからの依頼よ。


 もし謝罪も自首もしないのであれば―――ってねぇ」


一方で彼女の体は火傷どころか、衣服のどこも燃えてはおらず、


「さて救急車を呼ぼうかしら……あら?」


そこで彼女は自分のスマホからの着信音に気付いて出る。


「もしもし……あ、『雲外鏡うんがいきょう』様?

 はい、はい。ええ、あの映像はとても役立ちましたわ。


 え? もうひと働きして欲しい、ですか?

 場所は―――はい。そこの廃ビルですね?


 あれ? でもそこは近付かないようにってこの前……

 はい、はい……わかりました」


会話を切り上げると、『飛縁魔ひのえんま』はその場を去ろうとするが、


「あ、忘れてた。救急車、救急車」


火傷を負った男のために、彼女は通報のためスマホをまた起動させた。


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