第200話・あやかし(人間ベース)の活動01


『だから、家庭に問題がありそうな生徒を見つけるんだよ。


 相談に乗ってやると、すーぐこっちを全面的に信用するからな。

 そこが狙い目だ』


とある郊外の路地裏で―――


眼鏡をかけたセミロングの秘書風の女性が、40代くらいの男性を前に、

録画媒体である動画を見せていた。


「こ、これを、どこで」


「さあ? どこだっていいじゃないの。


 しかしこんなのが熱血教師サマとあがめられているとはねぇ。

 世も末だわぁ」


青ざめる男とは対照的に、淡々たんたんと彼女は語る。

その間にも動画は流れ続け……


『それで可愛ければ頂いちゃってもいいけどよ。

 ま、そんな生徒がそうそう可愛いわけは無いんだよな。


 だから一番の使い道は、他のガキどもの前で張り倒す事だ。

 何でもいいから落ち度を見つけてな。

 あれは効くぞー、連中、ビビって大人しくなるから』


『ぐひゃひゃひゃひゃ!

 つまり見せしめって事か? ひでぇな、オイ』


動画の中では2人の男がいて―――話を聞いている男も恐らく

教師なのだろう。


『そういう家庭の親はよ、子供に無関心か、もしくは面倒くさがりな事が

 多いんだ。

 だから間違っても警察沙汰にはならねぇ。


 安心してぶっ叩ける『安牌あんぱい』ってこった』


『その子が訴えたらどうするんだ?』


『あぁ? もし警察に駆け込んでもこっちは教師様だぜ?

 家庭に問題があるってこっちはわかってんだし、

 『ちょっと大げさに話す事がありまして』って言えば、

 同じ公務員仲間、それ以上は何も言って来ねぇさ』


『あっちも面倒くさがりなヤツ多いからなー』


『そうそう。

 何やっても無駄なんだからさ、ゴミは大人しく世の中の

 役に立ちゃいーんだよ。


 自分にも利用価値があるとわかって嬉しいだろ』


すると男は頭を抱えてうずくまり、


「止めろ! 止めてくれ!!


 いったい何が望みなんだよお前は!?」


眼鏡の女性は、悲痛な叫びをあげる小太りの男を見下ろしながら、


「カッコよく言えば、自分の罪と向き合えってところかしら?

 でも選択肢を上げるわ。


 1つ、これまで自分が酷い事をした生徒たちに会って、

 心からの謝罪と1人あたり賠償金3,000万円。


 もう1つは―――自分で教育委員会なり警察なりに自首する事。


 さてどっちかしら?」


彼女の言葉の後、男は沈黙した。


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