第307話・十六夜一族VS人妖混合チーム06


一方、十六夜いざよい一族『影』部隊サイド―――


煙羅煙羅えんらえんら』、『烏天狗からすてんぐ』、『唐傘からかさお化け』の『時雨しぐれ』の

襲撃を受けた彼らは、必死に態勢を立て直していた。


「なんなんだ、この勢いの強い雨は!」


「こっちに川童かわこ……河童が来ているのか!?」


「落ち着け!

 まずは目の前のあの男を対処する事が先だ!!」


事前情報とは異なる予想外の事態に彼らは戸惑いながらも、『時雨』に

目標を定めて印を結び始める。


「だから言っているでしょう?

 一方だけに目を奪われてはいけやせんぜ」


「何……!?」


『影』部隊の一人が聞き返すのと同時に、何かが彼らの間を

ものすごいスピードで駆け抜けた。


「時雨ー、雨は苦手にゃ。それにもうこれだけ降らせばいいにゃ」


「女……?」


声の方向を見ると、あれだけ猛烈に降っていた雨は止み―――

そこには長髪を姫カットにした二十歳くらいの女性がおり、


「『猫又ねこまた』の『麻夜マヤ』にゃ!

 よろしくニャ! という事でぇ~……」


彼女はかがむと、獣のように両手・両足を地に着け―――


「捕まえてみろニャ!

 もっともアタシは、捕まえる方が好きなんだけどにゃ♪」


その女性が走り始めた時、『影』部隊はようやくそれが先ほど、

彼らの間を目にも止まらない速さで通過した正体だと理解する。


「く、くそっ!! とにかく何でもいいからじゅつを撃ち込めっ!!」


「し、しかしとらえ切れません!」


同時に、止んだ雨の代わりだというように、上にいる『烏天狗からすてんぐ』から

強風を起こされ、


「! また風が―――

 よし、ならばあの『烏天狗』から落とす! 全員上空へ術を放て!!」


隊長の号令で、『烏天狗』にまるで衝撃波のような術式が対空砲火のごとく

撃ち出されるが……暗闇の中、こちらも照準が容易とは言い難く、


その間にも、『猫又』の『麻夜』が引っ掻き回すように、彼らの中を

縦横無尽に走り抜ける。


「た、隊長! このままでは……!」


「一撃だ! 一撃でも与えればいい!

 それで敵にもスキが出るはず。その間に離脱を……!」


『影』部隊は何とか現場から逃走する機会を作り出そうとするも、


「足元がお留守なのよねぇ」


「!? 今度は何だ―――」


新手であろう女の声に振り向こうとしたところ、足が動かない事に

彼らは気付く。


「た、隊長! これは!?」


「じ、地面が凍って……あ、足までも」


彼らの足は、いつの間にか凍った地面に、足ごと固定されるように

凍らせられていた。


「さぁて……仕上げよ、『飛縁魔ひのえんま』」


短髪なボーイッシュの『雪女』が呼ぶと、その声の先に眼鏡をかけた

秘書風の女性が現れ、


「寒かったでしょう? 暖めてあ・げ・る♪」


そう言うと彼女の体は炎に包まれた。


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