第227話・長老の見解


此度こたびはお招きに預かりまして……」


「いや、堅苦しいのは苦手だから。

 楽にしてくれると俺も助かる」


仙人のような外見の長老と、お供する7・8人ほどの若い男女の構成で彼らは

我が家へとやって来た。


「でもこれだけ?」


その人数の少なさに俺が思わず質問すると、


ぬし様が不在の今、山の周辺警戒を任されておりますのでな。

 あと何匹かはトレーラーハウスにて待機しておるはずです」


あー、そうか。

以前は群れごとで宴会もしていたけど、今は留守番や見回りに

人手を割く必要があるもんな。


群れが来る事を見越して大量に料理を作ってしまったのだが……

用意されたご馳走の山を見て、


「残った場合はお土産として持ち帰らせて頂きましょう」


「ちゃっかりしてるな。

 でも腐らせるよりマシだし、助かるよ」


「ほっほっほ♪」


そして―――歓談がてら長老への『相談』が始まった。




「『飛縁魔ひのえんま』・『烏天狗からすてんぐ』・『雪女』・『煙羅煙羅えんらえんら』……

 までは判明していると。


 そして最後の1人、そやつらをまとめあげているであろう者の正体が

 わからないのですな」


「ああ。どうも鬼の隠橘おきつさんの話では―――

 調査に長じたあやかしという事らしいんだけど」


俺は長老のグラスにビールを注ぎながらたずねる。


「これはどうも、恐れ多い事で……


 お話によると、動画を録画して送り付けてきたとか。

 今の人間の絡繰からくりはよくわかりませぬが、似たような事例を

 上げるとすると―――


 照魔鏡しょうまきょう降妖鏡ごうようきょうというのをミツ様はご存知ですかな?」


俺は首を左右に振る。


「我が国や唐国からくにに伝わる伝承にある鏡でござります。


 妖や、不可思議なものの正体を見破る事の出来る鏡にござりますが、

 それからの派生と思われるものの中に、『雲外鏡うんがいきょう』なる妖がおります。


 そして今回、人間が妖となった者……

 その能力を人の裏や本性を暴く事に使うようになったのでは」


なるほど。

妖怪の正体を見破る能力―――それを人間に使った場合どうなるか。

ましてやその能力を、現代機器に精通している人間の思考で利用したら?


俺が思考の中にいると、老人は不安そうな声で、


「少しはお役に立ちましたでしょうか?」


その問いに俺は頭を下げて、


「十分役に立った。この情報、東京に伝えても?」


「構いませんとも」


そして俺はそのまま小一時間ほど彼らを歓待し……

その後彼らは、残った料理を土産に包んで帰っていった。


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