第203話・弥月琉絆空視点05
「……はい?」
都内・某所にある警察署―――
そこの特別第六課に向かった自分を待ち受けていたのは、予想もしない
報告だった。
「あの廃ビルが焼けたそうです。
当時は風が強かった事もあり、5階まで燃え上がり……
今は消防職員が現場検証にあたっているとの事で」
その言葉に自分は頭を抱えた。
おじさんの提案を受け、例の廃ビルの再調査をお願いしたのが3日前。
さすがに新設された第六課といえど、役所は役所。
仕事で調査・申請する場合は時間がかかり―――
そしてその許可が下りるのを待っている間に、現場は文字通り『焼けて』
しまったのだ。
「……火事の原因は?」
「そ、それは現場検証中なのでまだ。
ただ、燃える物がほとんど無かったはずなので、ホームレスか誰かが
段ボールでも持ち込んだのではと言われています」
自分はため息をつきながらイスに腰掛ける。
「何で今回は許可が下りるのにこんなに時間が?
前回はあっさりと通ったじゃないか」
「ぜ、前回はですね……単なる実地訓練、現場に慣れるため、という理由で
申請しておりまして。
今回は同じ現場だという事で再申請となり、その理由もそれなりに
必要だという事になってしまいまして」
職員の答えに思わず天井を見上げる。
お役所仕事のダメな部分が思いっきり出ているなー……
こんな事なら勝手に独自で調査に行けば良かったか。
だけど自分も『表向き』の職業として、中堅どころの会社員を
やっているからなあ。
その予定をすぐに空けられなかったのも痛かった。
「今から行けないか?」
「そ、それは難しいかと。
何せ我々特別第六課は非公表の組織です。
なるべく他の部署と鉢合わせにならないように言われております」
「自分一人では?」
「協力者とはいえ、
現場検証中に中に入るのは不可能でしょう。
そ、その代わり―――検証結果の資料はすぐこちらに回すようにと
手配してあります」
「……ありがとう」
そこで自分は席から立ち上がり、何か飲み物を買うために自販機へと
足を向けた。
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